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『クリフサイドとの遭遇』

風が乾いた砂埃を巻き上げていた。

廃墟と化した街の中を、ディクターズの面々は黙々と歩いていた。崩れたビル、ひび割れた地面、寸断された高架橋。世界は何も語らず、ただ静かに、彼らの探索を拒み続けていた。

「……これで、三日目だな」

ティーチがぽつりと呟く。その声には疲れがにじみ、背中のカバンもいつも以上に重く見えた。

「もう何十キロ歩いたかわからないよ。人の気配どころか、鳥の鳴き声すらしないし」

リクもため息をつきながら、果てしない地平を見渡した。

その時だった。

「……あれ、見て」

ヒナが右手をかざし、ビルとビルの隙間を指さした。

その先――ふわりと宙を漂う黒い影があった。鳥のような羽を持ち、猫のような体をしたそれは、空に溶け込むように浮かんでいた。黄色の双眸がこちらをじっと見つめ、言葉もなく、ただそこにいた。

「……あの子は?」

緊張が場を支配した。ティーチは素早くスコープを取り出し、黒猫の姿を拡大する。

猫のようなそれは攻撃の意思を見せることなく、まだずっとこちらを見つめているようだった。

「行ってみよう!」

アイスが駆け出し、他の三人もそれに続く。黒猫は彼女たちを待っていたように、ふわりと舞い降りた。

「やっと見つけたにゃ……あなたたち、“落ちてきたキャラクター”たちにゃ?」

「え?」

リクが目を瞬かせた。

「自己紹介するにゃ。あたしは“クリフサイド”の使いにゃ。この世界に落ちてきた存在たちを探して、保護してるのにゃ」

「クリフサイド……?」

ティーチの表情が険しくなった。しかし、黒猫の声は不思議と信頼できる感じがした。

黒猫は頷きながら、空中にふわりと浮き上がった。

「君たち、クリフサイド本部まで来てほしいにゃ。……わたしたちが把握してる “ガンダーラ”って組織について、話しておきたいことがあるにゃ」

 その名を聞いた瞬間、アイスの目が鋭くなる。

「みかどが言ってた……自身が“ガンダーラの騎士”って」

 ヒナもわずかに目を細めた。

「つまり……みかどが今その組織で働いてるの?」

「正確には、“囚われている”にゃ」

 猫の声は淡々としていたが、どこか痛みを含んでいた。

「……行こう、みんな」

 アイスが小さく頷いた。

「あたしたちが動かなきゃ、誰も彼女を助けられない」

「私たちはこのエリアに残るわ」

ティーチが歩みを止め、急に振り返った。

「リクと一緒に、さらに奥の情報を探る」

「……了解。じゃあ、こっちはクリフサイドに向かうわ。気をつけて」

 その言葉を背に、あいすとヒナはバイクにまたがった。

 エンジンが唸りを上げ、地を蹴る。

 黒い猫の妖精は前方へと滑るように舞い上がり、二人を導くように飛び出していく。

バイクが疾走し、エンジンの唸りが風とともに地を走る。

 空は少しずつ晴れ始めていた。雲の切れ間から差し込む光は、これまでの灰色の世界を洗い流すかのように大地を照らしていた。

「……あー、気持ちいい!」

いちごアイスがハンドルを握りながら声を上げた。バイクの後部座席に座る紫叉ヒナは、風に髪を揺らしながら無言のまま空を見上げていた。

先導するのは、黒い猫の妖精。ふわふわと浮かぶその姿には、どこか神秘的な雰囲気があった。名前はまだ明かされていない。ただ、「クリフサイドの使い」だとだけ名乗っていた。

バイクはやがて舗装の途切れた道を外れ、木々の生い茂る森の奥へと入っていった。かつての文明の痕跡が点在するその道を、猫の妖精が滑るように導く。

「……ねえ、クリフサイドって、いったい何なの?」

 ヒナが尋ねると、猫は一度空中でくるりと回転してから、ふわりと彼女たちの横に並んだ。

「この世界に“落ちてきた”者たちを保護し、ガンダーラに対抗するために作られた機関……それがクリフサイドだにゃ。」

「今まさに、『ガンダーラ』っていう組織がこの世界を支配している。……彼らは“闇の力”を利用して、落ちてきた者たちを手当たり次第に狩っているらしいにゃ。さっきまでいたグレイシティーにいる幹部が……“フォルトナ”っていう悪魔にゃ」

その名を聞いて、アイスの眉が動いた。

「あの……トラ男が言ってた。『フォルトナ様』って」

「……で、みかどはどこにいるの?」

 ヒナが鋭く問いかけた。

猫は少し黙った後、小さく頷いた。

「……彼女は洗脳されて囚われている。おそらく、フォルトナの本拠地の一つ、“黒い高塔”に」

「黒い高塔……」

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