表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

『完成された"嫉妬"』

その頃、アイスとヒナは確実にみかどを追いつめていた。

今や、二人の連携は完璧だ。アイスの攻撃がみかどを後方へと追いやり、その退路を塞ぐように、ヒナの触手が静かに待ち構える。

そしてヒナが囮となって意識を引き付けて、アイスが死角から回り込む――。


「まずいね…!」


みかどは防戦一方になり、とうとうテレフォースの構えをとる隙すら失っていた。

霧の中、少数残っていた部下たちも、すでに二人の猛攻によって次々に吹き飛ばされていく。

「あと数手……!」

ヒナが静かに低く囁いたそのとき――

みかどの足首に、ひやりとしたものが絡みついた。

ヒナの触手が、地を這って密かに回り込んでいたのだ。

「っ……!」

とっさに引き抜こうとするも、もう遅い。

ぐっと足を引かれたその瞬間、アイスが跳躍していた。

「ここで決めるよッ!!」

灼熱のハンマーが、空中で閃光をまといながら――みかどの脇腹へ一直線に振り下ろされる。――霜焼けの炎ッ……

「がはっ…!」

重く、鈍い音が響く。

みかどの身体は大きく吹き飛び、瓦礫の山を砕きながら、廃ビルの壁に激突した。

砂煙が舞い上がり、あたりは一瞬、静寂に包まれる。

「……やった、の……?」

アイスが静かに着地し、息を整える。

その衝撃で、みかどを覆う赤黒いオーラがわずかに弱まったように見えた。

――そのとき、みかどは人間としての感覚を、ほんの少しだけ取り戻すことができた。

(あれ、全身が痛い……なんでだろう。)

呼吸が浅くなっていく。

だが、心臓の奥に、どうしようもなく込み上げる何かがあった。

胸が、痛い。

「あいすが、ヒナと並んでる…なんで……?」


みかどは洗脳される前、好きだったんだ。ずっと。アイスのことが。

今、そのアイスはヒナとの完璧な連携で、自分を「敵」とみなし追いつめている。

もうその想いはアイスには届かない……

みかどの瞳が、ふるふると震えた。

「……!」


それは、ただの怒りではなく、悲しみでもない。強い強い、身を焦がすような嫉妬。

次の瞬間、みかどの身体が変貌した。

黒くえぐれていた顔の左上が再生し、両目が揃った顔になる。髪が伸び、表情も大人びた鋭い眼差しに変わっていく。

「……これは――!」

ヒナが息を呑む。

アイスも、その異様な雰囲気に、わずかに目を見開いた。

――《嫉妬IFモード》

『好きな人以外の攻撃は通じない』

それが、この形態の絶対的な特性だ。

つまり、今のみかどにダメージを与えられるのは、アイスただ一人。……そう、本来ならば。

ブワッ、と。

みかどを包む赤黒いオーラが、再び膨れ上がる。

「……っ!」

それは煙のような、“あのオーラ”――洗脳の象徴。

一瞬、かすかに戻った人間としての感覚が、再び赤黒い奔流に呑み込まれていく。

心が、記憶が、感情が……塗り潰されていく。

アイスが好きだったことも、

ヒナに嫉妬して胸が痛んだことさえも――全て。

――これはフォルトナの策略。

まず、洗脳を一時的に緩めることでアイスへの好意を蘇らせ、

そのうえでヒナへの嫉妬を誘発し、みかどを《嫉妬IFモード》へと導く。

そして、再度洗脳を強化し、アイスへの想いそのものを完全に消し去る。

結果――

今のみかどには、誰の攻撃も通じない。

まさに『無敵』の完成形。

そしてそれは、かつて好きだった相手――アイスを、

“自らの手”で壊させるための、最低最悪の罠だった。


「どうして…なんだ」


テレフォースの乱射。

爆発が次々と周囲を巻き込み、周囲の街並みは、たちまち焦土と化していく。

「ぐっ……!」

ヒナの触手が焼かれ、アイスも爆風で吹き飛ばされる。

みかどはノーダメージのまま、二人の体が一方的に削られていく。


「……!!」

沈黙のはずなのに、低く、淡々と響く。

テレフォース――命中率こそ高くないが、急所に当たれば致命傷になり得る圧倒的な破壊。

今、それが空中に縦横無尽に放たれている。

爆発、爆発、また爆発。

地が裂け、建物が吹き飛び、地平のすべてが灰と化していく。

身を守る術がない。

「ッ……!」

「なんで……なんで、あたしたちの攻撃、通らないの……!」

アイスが叫ぶ。

「……アイス」

「これ……ほんとに無理かも……」

普段、あれほど自信に満ちて残酷ですらあったヒナが。今、初めて――弱音を吐いて怯えていた。

これが――“嫉妬IF・洗脳融合体のみかど“。

最悪の完成形だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ