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『みかど解放戦』

「誰だ!お前はっ!!……?もしや、ガンダーラの手先か!?」

アイスが一歩前に出ると同時に、彼女の髪は戦闘時特有の赤に染まる。

手にはすでに、巨大なハンマー「デ・ストロイ・ベリー」が握られていた。

紅蓮の炎がその武器からゆらりと立ちのぼり、アイスが地面を強く踏みしめると、衝撃で地面に亀裂が走る。

「なら、全部、ぶっ壊してでも……みかどを、取り戻す!」

横に立つヒナは、薄く笑っていた。

不気味なほど静かに、黒く滑らかな触手が頭からぬるりと現れる。

一本、また一本。

つむじから生えたそれらは、まるで自らの意志を持っているかのように空を這い、ピリピリと空気を震わせる。

「ふふ、ごはん、たくさん来そうね……喰って、喰って、喰いつぶしてあげる」

ヒナがそう呟いた直後、灰色の霧の中から人影が現れる。

「「みかどぉ!!!!!!」」

その姿を見たアイスの叫びが戦場に響いた。

――それは、以前とはまた少し違った気配をまとったみかどだった。目は感情を完全に失い、赤黒い禍々しいオーラが皮膚を刺すように漂っている。

それに続いて、手下たち、魔物たちが四方八方から迫ってきていた。

「きゃはっ、いいじゃないの……!」

ドラミンゴが笑い、身を震わせる。

「まさに戦争、って感じぃ!!」

ヒナの触手がすっと伸び、禍々しい黒い剣を構えたグレイを狙う。しかし、彼はそれを見越していたかのように、するりと身を引いた。

「おや……私は、今日は観戦役ですので。どうぞ、お続けください」

グレイは微笑みながら一歩後退し、戦場の外縁へと歩く。

「っ……あいつ、逃げる気かよ!」

ドラミンゴが舌打ちし、グレイの動きに目を光らせ、周囲の兵士たちを巧みにすり抜けながら追っていく。

揺れる地面、不気味な笑い声……アイスたちは気がついたらすでに数十人規模の兵士たちに囲まれていた。ハンマーを振り回す巨体の者、白い外套をつけた剣士たち、そして、騎士の兜に手足が生えた異形の戦士の群れ。

その全てが、グレイの命令一つで動く。

突然、みかどがこちらに向けて飛び出してくる。

「みかどぉおお!!」

アイスは思わず叫び、駆け出した――だが、

「――ッあぐぅ!」

脳を貫く鋭い痛みと共に、黒い鋭利な光線が彼女を直撃した。みかどの放ったテレフォース。肩が弾けるようにしびれ、膝をつく。

「ちっ……クソが……!」

ヒナが横から駆けつけるが、その触手は重装の雑魚兵に阻まれる。ジリジリと金属がすり減る音がしながらも厚い鎧が触手を受け止め、斬撃が弾かれる。

「うぅっ……硬い、ごはんのくせに、頑丈ね……!」

ヒナの瞳が鋭くなり、触手が渦を巻いて巻き込み、強引に兵士たちを拘束していく。

一瞬の隙に、ヒナの触手が伸びる――みかどに向かって。

しかし、みかどはするりとそれを避けた。

「みかど……戻って!」

アイスは歯を食いしばりながら立ち上がる。

そのとき――記憶がよみがえる。

『みかどの洗脳を解除するには、みかどを倒し、抑えるしかない』

クリフサイドで聞いた、あの言葉。

心が揺れる。けれど、もう迷っている場合ではなかった。

「ヒナ……行こう。私たちで……みかどを、止める!」

「当然。あの子の心も体も壊れてる。戻してあげないと」

アイスとヒナがみかどに向かって飛びかかる。

みかどは未来視を使わない。かつて、情報量の暴走で自滅しかけた教訓を生かしている。だからこそ、今回はただ動きを読み、避け続けるだけ。

(避けるだけ……っ!)

みかどの戦闘手段は、事実上ひとつしかない。

“テレフォース”――対象に高エネルギーをぶつける遠隔攻撃。

だがこの技には致命的な欠点がある。本来は命中率が異様に低い。この技は洗脳が強化された状態でも、まだ命中率が十分高いとは言えなかった。

肉弾戦は不向き。ハンマーの打撃を弾ける武器も持っていない。

だからこそ――攻めるより避けることを優先する。この瞬間を生き延びて、余裕が出てきてからテレフォースを撃つ。それが最適解だった。

アイスが何度も攻撃を仕掛けるが、みかどは的確に身体をずらし続ける。重装備の雑魚兵たちがみかどの盾になるかのように、その隙間を埋めようと群がる。

「こいつら、多すぎる!」

ヒナが苦戦しながらも、まとめて触手でなぎ払う。

だが、こちらもいつまでも空振り続けるわけにはいかない。

戦場の隣の廃墟の上では、ミーナが両手の平を合わせ、詠唱していた。

「速さと力、空より授けるにゃ……うちの子たちに、祝福を……!」

加護が淡い光とともにアイスとヒナの体に降り注ぐ。その瞬間、彼女たちの動きが一段と鋭くなった。

「今だ……!」

アイスが回り込むように跳躍し、みかどの脇腹へ激しく燃える巨大なハンマーを打ち込もうとする。――だが、ぎりぎりのところで手が止まった。

「っ……ダメ、こんなの……。やっぱり傷つけたくないよ……!」

その一瞬の迷いが、形勢を崩す。みかどが再びテレフォースが発動しかける――

「……アイス、躊躇うな」

ヒナの声が、背中越しに響いた。

「みかどを救うために、今みかどをぶっ飛ばすのよ!」

アイスの目に、決意が宿る。

「……ごめん、みかど。すごく……痛いかもしれないけど、絶対に助けるから!」

燃え上がるハンマーを再び構え、深く踏み込む。その目には、もはや迷いはなかった。

(来る……!)

みかどはテレフォースをキャンセルし、足捌きだけで距離を取ろうとする。

だが、その一歩先――霧が地面に流れ込み、視界がじわりと曇っていく。

その霧の中、ヒナの影が静かに動いた。

(……上!)

気づいたときにはもう遅かった。ヒナが頭上から跳びかかり、触手を鞭のように振るう。

みかどは咄嗟に跳ね退き、ギリギリで直撃を避ける――が、そこを狙っていたアイスが側面から強襲する。

「てりゃあああッ!!」

大きく回転しながら放たれるハンマーの横薙ぎ。みかどは身体をひねってそれもかわそうとするが、そのスピードについていくのが難しくなる。

炎が袖を焼き、焦げ跡が残る。

「回避がギリギリになってる……!」

今や、二人の連携は完璧だ。

雑魚を薙ぎ払い、みかどを確実に追い詰めていく。

――そのすぐ隣、廃墟の広場では。

ドラミンゴが、フォルトナの側近――影のトカゲのような男、グレイと対峙していた。

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