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投資顧問 山中美樹

 関西系のテレビ局である関西中央テレビは東京のさくらテレビ系列のテレビ局である。東京の番組を中心に放送するが、朝や午後のワイドショーや深夜番組は独自の番組作りをしている。東京にはない面白さを発信しているので根強い人気を誇る番組も多い。『北浜からとっておき情報』という番組もそんな番組の一つで、毎週金曜に深夜にお色気番組が多い時間帯だが、経済の活況と共に視聴率を稼いでいる。東京の金融街といえば日本橋界隈をさすが、大阪では大阪証券取引所がある北浜をさす。大阪経済の中心地で大手銀行や証券会社、投資顧問などが集中している。

この番組を支える出演者の一人が山中美樹だった。彼女は若干29歳にして大阪北浜の中心地に投資顧問会社を持つ、経済アナリストで、コロナで経済が弱体化し、株価が低迷した中、わずか数百万円の資金で仮想通貨を運用し、1年で数倍になるとその資金を金に投資し、その後経済が回復しかけるとアメリカの株式市場でテスラやエヌビデアへの投資で大成功し、その資産は数百億に上ると言われ時の人となった人物である。彼女のもとには多くの投資家から資金が集まり、さらに大きな利益を上げつつある。そんな彼女が毎週金曜日の深夜、次の週の相場について語るのだが、彼女がまだ29歳の絶世の美女であることが、人気に火をつけた。


7月25日金曜日も生放送で彼女は関西中央テレビに来ていた。彼女のマンションは北浜から近い中の島の一等地だったので、テレビ局がある堂島も歩いても行ける場所だった。しかし局が準備したハイヤーで乗り付けると、番組が始まる1時間前にスタジオ入りをして準備に入った。番組の進行は局アナの内島順子、パネリストは大阪経済同友会の佐川健一氏と山中美樹だった。番組プロデューサーと談笑してお茶を飲むとディレクターの中山が入ってきて、今週の話題について振ってきた。

  「今週はアメリカ大統領選挙の行方と今後の株価についてです。日本の株価とアメリカの株価、それぞれ分けて話したいと思います。」と言っている。山中は

  「わかったわ。アメリカも日本も株価のことは私から詳しく話しますから、大統領選挙については佐川さんにお願いするとどうかしら。」と答えた。すると佐川氏も頷き、和やかな雰囲気でスタジオに入った。


   時間になり、生放送が始まると内島アナウンサーが冒頭のあいさつと出演者の紹介をした。そして

  「近づいてきましたアメリカ大統領選挙の本選ですが、佐川さん、どのような結論を予想しますか。」と直球で聞いてきた。佐川は

  「難しいですね。予断を許さない接戦になっているようです。ただ今のところの分析では共和党のトリンプ候補がやや優勢と出ています。私もアメリカの友人たちに訪ねてみてもトリンプの優勢は覆らないと言っていました。いろいろ選挙違反ぎりぎりのことを仕掛けているようですが、選挙は勝ってしまえばすべて勝者の思い通りでしょう。この4年間がアメリカも物価の高騰や失業者の増加など、民主党政権の無策でアメリカ国民は疲弊しきってますから、トリンプにすがりたい思いは大きいと思います。」と発言した。次に司会のアナウンサーがアメリカ経済の展墓について山中に聞いてきた。山中美樹は黒いスーツ姿だがスカートは膝よりもやや短くきれいなふくらはぎがむき出しだったが、その足を組み替えて膝上まで画面に映し出されると

  「アメリカ経済はこの選挙結果だけで左右することはないと思います。結果がどうであれ、現在のアメリカ経済を牽引しているのはテスラの電気自動車技術やエヌビディアの半導体技術など、他の国で真似のできない技術力です。選挙結果はダストベルトの労働者たちの票にかかっているかもしれませんが、現在のアメリカ経済はもっと南のサンベルト周辺で動いています。日本や中国、インドが技術を進歩させてもアメリカはさらに先を行っています。しばらくは揺らぐことはないと思います。したがってアメリカ経済の株価も当分は堅調と見ています。」と自信をのぞかせた。彼女のこの考えは2年ほど前からこの番組で述べられてきたが、彼女の意見に乗せられてアメリカ株を購入した人たちからは、多くのお礼の反響が来ていたのだ。アメリカの物価高はあったが、賃金の上昇とアメリカドル高円安でドル建ての株を購入した人は何倍にも資産を増やす結果となっていた。

   続いて司会者は日本の株価について山中に聞いた。山中は

  「日本株は一方的な上がり方は考えられません。円安傾向がどこまで進むかにもよりますが、30年続いたデフレはようやく終焉を迎えようとしています。30年眠っている間にアメリカもヨーロッパも経済を拡大し続けました。同じように日本も成長していたら今頃株価は10万円を超えているでしょう。人件費を上昇させ物価も緩やかに上昇していくならば、日本の株価も欧米並みに成長するはずです。ただ急激な円安の痛みは株価の上昇を抑えることになりますから、注意が必要です。結果的には上がったろ下ったりを繰り返しますが、日本経済も堅調に進んでいくと考えています。どうか日本株を購入してください。」と発言した。いまや彼女の発言は経済を動かすともいわれている。彼女が買いだと言えば翌週から株価は上がり、彼女が売りだと言えば株価は下がる現象はここ数週間続いている。


   生放送が終了し太田プロデューサーから

  「山中さん、もしよかったら佐川さんやうちの内島と一緒に北新地に出ませんか。」と誘われた。山中は女性の内島アナも同席と聞いて少し安心したのか

  「それじゃ、ちょっとだけ。」と言って同席することを同意した。太田プロデューサーも佐川さんも50代の男性。内島アナも山中よりも年上の35歳である。山中が一番若いが家までそう遠くないので晩御飯を食べるついでの感覚だった。

   局からタクシーに乗って北新地までは5分。ついた店はクラブ『フォンティーヌ』高級そうな店だったが、太田PDが連れてきたのだから局で支払うのだろう。番組制作費の一部である。太田は店の常連なのか中に入ると大きな声で

  「ママ、よろしく頼むよ。今日はVIP同伴だから」というと女性たちが数人出て来て一番奥のボックス席に案内した。4人が座ると女性スタッフも4人同時に座って、お酒を造り始めた。山中美樹の隣に来た女性は20代前半の若い子で、スパンコールのきらきらしたミニスカートを履いている。山中は『女の私の横につかなくてもいいのに。』と一瞬思ったが彼女たちはこちらのリクエストに忠実に答えてくれるので助かった。山中は少しお腹がすいていたので

  「何か食べるものはないの?」と聞くと彼女はすぐにテーブルの下からメニューを出して

  「山中先生、どれがいいですか。このビルに和食も中華もイタリアンも何でもありますよ。すぐ持って来てくれますから。」と案内してくれた。山中は

  「それじゃ、小籠包とチャーハンをお願いします。」というとそれを聞いていた太田が自分たちもお腹がすいているから全部4人分ずつ頼むと言い出した。みんな同じようにお腹がすいていたようで、少し笑顔になった。特に内島アナは喜んで

  「山中先生、いいセンスしてますね。このビルの中華は小籠包が絶品なんです。もしかしてここによく来るんですか?」と聞いてきたので山中は首を横に振って

  「こんな高級店、来たことないです。投資家のお爺さんたちは危ないから夜は会わないようにしているし、会社の社員たちは若いから居酒屋とかが多いです。」と答えた。内島は驚いた様子で

  「先生、大金持ちって聞いていたから庶民の店なんか行かないのかなって勝手に思ってました。庶民的なんですね。」と言ってにこやかに笑っている。

  しばらくするとスパンコールのミニスカの女の子が小籠包を持って入ってきた。

  「小籠包来ましたヨ。熱いから気を付けてください。チャーハンは店の人が直接配達してくれるそうです。」と言ってテーブルに並べ始めた。きれいにラップでパッケージされたお皿をあけると小籠包が3つ、一人分として入っていたが白い湯気が立ち上がった。たれの入った小皿のラップをはずして箸でつまんだ小籠包をたれにちゅけて口に運ぶと、小籠包の皮が舌の上に乗った。ゆっくりと歯で噛もうとすると中から熱湯のような熱さのスープがほとばしってきた。4人ともその熱さにのけぞり熱さを表現したが、同時にそのスープのおいしさに感銘を受けた。

  「おいしい。この店、何ていう店なの?」と山中が聞くとスパンコールの彼女が

  「上海飯店です。私は大阪一の店だと思います。神戸の南京町にもお店があるそうです。」と話してくれた。やがて白い調理服を着た料理人が岡持を持って店に入ってきた。チャーハンだ。チャーハンの味はその店の実力を示すともいわれる。テーブルに並べられたチャーハンを山中がまずレンゲですくって食べてみた。ぱらぱらと炒められたご飯の一粒一粒に黄金のように卵がコーティングされ、具材は大きめの豚肉の角切りと大きめのエビ、ホタテがごろごろと入っていて、高級感があった。

  「おいしい。このチャーハン。今まで食べたチャーハンの中で最高です。」と山中は目を潤ませてその感動を伝えた。太田は山中におもてなしできたことに満足した。

   食事の後はお酒をたしなんでいたが、佐川氏は家が遠いという事で先に帰って行った。内島も明日の朝はニュースを読むとかで帰って行った。

  2人だけ残った太田と山中は酔いが回るまで飲み続けてしまった。山中美樹が気が付いた時には店のスタッフは奥に引っ込み、太田と2人だけになっていた。

  「山中先生、上に部屋を取ってありますよ。少し休んでいきませんか。」と誘ってきた。山中美樹はついに来たかという気持ちもしたが、いつもお世話になっている太田さんだし、これからもこの男のことは役に立つかもしれないと、打算的な考えも浮かんだ。しかしホイホイついていく軽い女と見られるのも、これからのためにはよくないと思い、

  「だめです。そんな女じゃありません。帰ります。」と少し演技した。すると太田は

  「部屋で少しだけ飲みなおしましょう。」としつこく迫ってきた。山中は

  「変なことしないでくださいよ。ちょっとだけですからね。」と言って彼の手に引かれながらエレベーターに乗った。


   その部屋は最上階の大きな部屋だった。テレビ局の幹部が社用で利用するため、自分の懐は傷めない。だからこんな高い部屋を使うのだろう。山中はそう思いながらも会社のお金なんだから楽しんだ方が得かなとも感じていた。

   部屋のドアの前では立っていられないくらい酔っているという演技をして、彼の肩を借りながらかろうじて立っていた。部屋のドアが開けられると、中に倒れ込むように入っていった。そのまま奥のベッドに2人で飛び込むように倒れ込んだ。

   かなり酔っていた太田と酔ったふりをした山中。太田が山中を抱き寄せてキスをしてくる。山中はじらすようにはねのけ

  「変なことはしないって言ったじゃないですか。」と拒むふりをした。なおも太田は山中の身体を抱き寄せ、スーツの上から胸を触り、スカートの中に手を入れようとしてきた。山中は太田の顔を見ながら

  「何もしないって言ったのに、悪い人ですね。仕方ないからシャワーを浴びましょう。」と言って一緒にシャワーを浴びるために起き上がって彼の手を引いた。結局一戦交えることになったが、山中も久しぶりのセックスだった。避妊することは忘れず、自分のカバンに忍ばせたスキンを彼の物にかぶせた。

   太田は念願かなって山中を抱くことができた。しかし少し違和感があったのは。山中美樹がとても上手だったことだった。お金持ちの絶世の美人で、すべてを持ち合わせているが。性のテクニックまで持ち合わせていることに、彼女が何者なのか不安もよぎった。「」


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