異世界に国家ごと転移したので俺は何回も死んで滅亡ルートを回避する (1話だけ)
最初の1話なんで特に特徴はないよ。
神条葵は生粋のバカである。
中三から大学受験の今に至るまで学校に行かずゲームに引きこもっているバカだ。
だが、才能だけはあった。E-スポーツ選手となり、始めた配信は同接500人を突破―――一応自立できるだけの金は稼いでいる。
、、、が常に金はない。考えなしに全部使ってしまうからだ。
そんな彼が呼ばれる名は――――――「生粋のバカ」だ。
* *
「―――――――今日12月31日午後11時から明日の1月1日11時までの24時間耐久配信行くぞ!」
コメント
きたーーー
バカすぎるww
年越しになんで地獄するの?
E-スポーツの選手がやることじゃあないんだよなー
「金がないからやるんだよ!」
俺は金遣いがおかしいことで有名なのだ、それもチームメンバーもあきれるほどに。
だが、こればかりは不可抗力だ。
コメント
い つ も の
ギフトどこに行ってるんだ?
パチンコか?
飯代だろ
「お前らのギフト(スパチャみたいなもん)には感謝してる!、だが食事とジムの器具代で全部消えるんだよ!?
、、、だからギフト投げろ!」
コメント
本音出たw
中身バケモンだろ
元ニートが何言ってんの
「俺は元ニートの細マッチョFPSプロ選手だぞ?、金は稼いでる!この元日に、この配信見てるバカどもからな!」
コメント
開示案件w
傷つきました
流れていくコメントを拾いながら、俺は話の落としどころを探すが――――まあいい。
「雑談は終わりだ。ここからは地獄のFPSランクマッチに突入する! 元日仕様の右手で勝率90%出すぞ!」
気合を入れてマウスを握った――その時、モニターの端で通知がちらついた。
『【緊急】サーバーとの接続が不安定です。海外データセンターへのアクセスに失敗しました』
「……は?」
マッチング画面はグルグル回ったまま止まっている。
コメント
おい回線死んだ?
鯖落ちか?
またお前のプロバイダだろw
「いや、俺の回線はさっきまで普通だったぞ」
さらに通知が立て続けに表示された。
『国際回線に接続できません』
『一部サービスが利用できません』
『海外との通信が遮断されました』
俺は焦りながらブラウザを開いた。海外のゲームサーバーも、SNSも、ニュースサイトもすべてタイムアウト。
かろうじて国内のニュースサイトが開くと、トップに躍る速報が目に飛び込んできた。
『【速報】日本、国際通信から切断――海外と連絡不能』
「なんだこれ」
コメントが急に荒れ始める。
コメント
海外鯖全部死んだ。
ツ○ッターもイ○スタも全部真っ白
これヤバくね?
「誰か何が起きたかわかるか?」
コメント
いやマジでわからん
これガチのやつ?
ニュース遅すぎ
回線切れただけじゃね
そのとき耳をつんざくJアラートが、部屋のスピーカーから鳴り響いた。
『国民保護に関する情報。北海道にミサイルと思われる未確認飛行物体が接近中――――屋内または地下に避難してください』
「、、、え?」
心臓が跳ねる。
Jアラートは訓練以外では聞いたことがない。だが、いま確かに俺の住む北海道に「未確認飛行物体が接近中」と告げられた。
コメント
え、Jアラート鳴ったぞ!?
俺もだ、スマホが爆音で鳴ってる!
これ演習じゃねえのかよ
北海道って、お前んとこだろ?
「、、、俺、道民だけど、、、」
手が震える。
配信のコメ欄は怒涛の勢いで流れ続けるが、内容がほとんど読めない。
背後の窓の向こう冬の空が一瞬だけ光った気がした。
コメント
空、なんか光ってね?
花火?
ミサイル?
「冗談、だろ」
コメ欄は混乱に包まれ、俺がいる部屋はJアラートのサイレンだけが響く。
俺は無意識にマウスを握りしめたまま、部屋の窓から空を見上げようとして、、、
、、、。
、、、、、、。
、、、、、、、、、。
* *
夜明け前の空を、重たい回転音が切り裂いていく。
報道ヘリ「サッポロ・ニュース・アイ01」は、北海道・札幌市上空を旋回していた。
「マジか」
副操縦士のつぶやきが、インカム越しに漏れ聞こえる。
カメラマンの山崎は、呆然としたままカメラ越しに町を見下ろしていた。
札幌中心部。
そこにあったはずの繫華街も、テレビ塔も、すすきのも、何もかもが、瓦礫に変わっていた。