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3/9

『11人いる!』 萩尾望都

 前回に続き、萩尾望都さんの作品です。

 前回冒頭でトーマのことを「もしかしてタイトルさえ知らない人が多数だったりして」と呟いたんですが、冗談になっていなかったことにおののく私……。

 でででも、今回のは有名ですよね? ね?



 【あらすじ】



 人類が宇宙に進出し、各惑星で活躍する未来。

 宇宙大学の最終試験は「受験生が10人づつのグループに分かれて宇宙船に乗り込み、外部とコンタクトしない状態で53日間過ごす」という協調性テストだった。


 だが、主人公タダ(タダトス)が乗り込んだ船には、最初から難題が待っていた。10人のはずの船内になぜか11人もいたのだ。

 大学とコンタクトをとると、その時点で試験失格となってしまうため、それはできない。

 11人目は誰なのか。正体も目的もまったくわからず、受験生たちは疑心暗鬼になっておたがい反目しあう。 


 そんな中でもタダは、性別が未分化の受験生フロル(性ホルモンを投与されて性別を決める星の出身者)と親しくなり、心を通わせる。

 ほかの受験生たちも次第に打ち解け合い、一同には、ともに合格をめざす者どうしの結束が生まれていく。


 あらたな危機がいくつも訪れ、そして迎えた思わぬ事態。それでも──。

 彼らは、明るい未来を自らの手でつかみとっていく。


 (1975年 別冊少女コミック連載)



  ────



 まず絵の説明から。

 トーマとほぼ同じ時代に描かれているので、絵柄は同じように繊細で綺麗です。

 でも、舞台はほぼ宇宙船の中のみ。みんなの衣装は身体にぴったりとした宇宙服。美的要素はほとんどありません。

 ただしフロル以外は(笑)。


 タダは黒髪、細いヘアバンドで前髪を上げていて、まじめな好青年といった印象。

 対するフロルは、金髪の巻き毛を長く伸ばした、美少女ともみまごう外見の持ち主(注・性別未分化)。

 このフロルが、画面の華を一手に引き受けているわけですが、十分すぎるほどの華なのがフロルのすごいところです。

 何しろ、江戸っ子を思わせる元気いっぱいな性格なので。


 さてストーリーですが、これを書くにあたってウィキを見ていたら(どうしても頼ってしまう……)こんな文章を発見しました。


>少女マンガ初の本格的なSF作品で、それまで少年マンガしか読まなかった読者や、小説家・文化人にまで大きな影響を与えた。


 そうだったのか……と、すごく感慨深く思ってしまいました。

 というのもこの漫画は、中学生だった私にはじめて「SF」というジャンルがあることを教えてくれた、記念すべき作品なんです。


 最初に読んだときのワクワク感を、いまもよく覚えています。

 宇宙船という閉鎖空間にも関わらず、生き生きと動き回る登場人物たち。

 ハイテンポで畳み掛けていく展開。

 謎また謎。

 最後に用意された、感動的な決断。

 そして、さわやかな光あふれる大団円!


 こんな面白い作品があったのか、とカルチャーショックを受けました。

 

 でも、私だけじゃなかったんですね。

 たくさんの人たちがこの作品に影響されて、その後の文化を作っていった……。そのことを知って、あらたな感動を覚えます。


「初の本格的SF」とありますが、私の記憶だと萩尾望都さんは、もっと初期からSF設定の作品をいくつか描かれていたように思います。

 ただ短編だった(気がする)ので、メジャーな世界に打ち出した長編としてははじめての、という意味でしょうか。


 そしてご存じのように(ご、ご存じですよね……)その後も傑作SFを次々に描かれていくわけですが、切なかったりシビアだったり難解だったりと、どんどんコアになっていくので、けっこう読者を選ぶ作品群かと。

 実は私も未読のもの多数……。


 そんな中、この『11人いる!』は本当にさわやかなハッピーエンドで、SFを読まない人たちにも広く受け入れられています。


 スペースオペラにして密室ミステリー。

 しかも恋と友情がもれなくついた、極上エンターテイメントなのです。



 

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― 新着の感想 ―
この「11人いる!」のメディア化は1986年のアニメ映画版が有名ですが、NHK少年ドラマシリーズとしても映像化されていますね。 そして後の「彼方のアストラ」にもエッセンスが受け継がれている事を考えます…
拝読させていただきました。 元SF少年ですが、萩尾先生の作品で読んだのは、この作品と「百億の昼と千億の夜」のみです。 そして、この作品にはビックリしました。 まさしくSFスピリッツです。
「11人いる! 」86年アニメ映画の主題歌「僕のオネスティ」をラジオ関西のリクエスト曲を流す「青春!ラジメニア」内で聴いた時、男性とは思えない川上進一郎さんの透明な歌声にショックを受けた記憶があります…
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