第七十三話
「いやなんだよ...」
ずっと詰まっていたものが吐き出されたように、星華さんはつぶやいた。
「もう...大切な人を失うのは...っ...
でも...分かってる...っ...私の心はたくさんの人に...自分の歌を届けたいと思ってる...
そして、............君といつまでも居たがってるってことも...」
最後の方は本当に小声だったためよく聞き取れなかったが、星華さんが逡巡していることはよくわかる。
迷っているならかける言葉は一つだけ。
以前に星華さんが俺にかけてくれたような、前へと進む勇気を与えるような言葉だ。
「じゃあ、さ。今、壁を越えようよ。やりたいこと――多くの人に星華さんの歌を届けること――を現実にするために。」
星華さんは目元にたまった涙をぬぐい、笑顔を作って言った。
「そうだね。はぁ。じゃあ、こんなところで泣いてる場合じゃないな。
大切な人を作ることを恐れていられないなぁ。」
そして俺の方を向いて、
「陽大君。あなたは私にとって、もうすでに大切な人なんです。
あれだけのことを言ったのだから、私の周りからいなくなったりしないよね?」
「ああ。当然だ。何ならいつでも、だれよりもそばで星華さんのことを支えて見せるよ。」
「...じゃあ、私と付き合ってくれますか?」
「よろこんで。」
いきなりの展開に驚きながらも、顔に出さないよう、表面上は落ち着いて答える。
そして、星華さんの告白に首を縦に振ると、彼女は最上級の笑顔を浮かべて言った。
「それじゃあ、私のこれからをたくさん彩ってくださいね。」
「もちろん。幸せにする。」
ラストもう一話かな...
ここまで読んでくれて本当にありがとうございました(スライディング土下座ながら感謝)