第六十八話
陽大君の告白を断って一週間。
今日はなんだかみんなとご飯を食べる気分になれず、一人屋上で風にあたっていた。
「はあ。」
朝から何も手に着かず、授業にも集中できなかった。
ここ最近ずっとそうだ。陽大君を振ってから。
後悔しているのだろうか、自分でも見えない不透明な心の奥底で。
ふと、誰にも話さず、ずっと封印してきた記憶が頭をよぎる。
久しぶりに不快な感情が蠢く。
「私は...私はどうしたいんだろう。」
*
「陽大君、星華なら多分屋上へ一人で行ったわよ。」
「ありがとう。」
陽大は萌の声を受けて屋上への階段を上りだす。
「頑張ってね。」
「そうよ、星華に...明るい未来を見せてあげなさいよね。」
二人の言葉に背を押されて駆け上がる。
屋上の扉を開けると、そこには切ないというべきか、寂しいというべきか...迷子の幼児のような顔をした星華さんがいた。
かける言葉が見つからず、名前を呼ぶに留まる。
「星華さん。」
「陽大君...」
彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでおり、そんな顔を見て心をぎゅっとつかまれる。
伝えると決めた気持ちが揺らぐ。
しかし、背中を押してくれた人の顔が頭によぎり、
「星華さん。俺は、やっぱり星華さんのことが好きなんだ。俺と付き合ってくれませんか。」
再び自分の思いを伝える―――