第五十三話
参拝が終わり、おみくじなどの恒例行事も済ませ、これから何をするかと言う話になった。
「せっかくこのメンバーが揃ったなら遊びに行きたいね。」
「そうだな。カラオケ...は流石にないか。」
「「「「カラオケ!?」」」」
全員が陽大君の発言に食いつく。
「カラオケはありだね。」
「うんうん。」
「結局星華ちゃんのカラオケは聞けなかったしね!」
「それじゃあ行こうか。」
*
さて、カラオケ店にて、店に入り、前回のように緊張することもなく、順番に歌い出す。
本日のトップバッターは萌。
着ている服にもよく合う演歌を歌い、驚愕の九十六点。
ここで一瞬空気が凍るが、順番は回る。
かわいそうなことに、次に歌ったのは嶺亜君。
めげずに国民的アニメの主題歌を歌うが八十六点。
とはいえ、彼への健闘を称える拍手はしっかりと送られた。
そしてこのみ、ライ君、来夏と続き、陽大君の番となった。
彼が選んだのはダークネスな雰囲気をまとう、また歌うのが難しい曲だった。
それでも彼は原曲の持つ絶望感や悲壮感をしっかりと表現して九十二点。
とはいえ、点数以上の歌だったと思うし、萌も、負けたと思ったのだろう。非常に悔しそうな顔をしていた。
そして私の番。
マイクを手に取り、ふと思い出す。
以前にカラオケに来た時から約半年。
こんな風にみんなと仲良くなって、歌えるようになって、ライブでリードを歌わせてもらえるとは思っていなかった。
胸の奥底から何か熱い感情が湧き出てくる。
こぼれそうになる涙をぬぐい声を発する。
結局、点数としては九十二点と、トップではなかったが、この日一番の大きな拍手をみんなから送られた。