第五十一話
それからショッピングモールをのぞいてみたり、クリスマス一色に飾り付けられた街を歩いたりして、星華さんと過ごす時間はあっという間に過ぎ、夜がやって来た。
あちらこちらがイルミネーションで彩られ、本当に美しい。
「きれいだね。」
「ああ。本当にきれいだ。」
内心で、星華さんが綺麗だと無意識のうちに付け加え、そのことを自覚して、顔を赤らめてしまう。
とはいえ、今日の星華さんはどこぞの一流モデルなのか、というレベルの美しさなのである。
化粧こそ濃くないものの、服の繊細な細工がゆらゆら揺れていたり、イヤリングの煌めきに今日最初に一目見た瞬間から心を完全につかまれていた。
勿論、俺だって、おしゃれと言うものはした。
女子の感性はわからないため、妹である沙羅に相談し、”多分大丈夫”という沙羅の中で最上級のお墨付きをもらったのだ。
それでもこの輝きを目のあたりにすると、自分に自信をどうしても無くしてしまう。
とか考えていると、黙っていたからだろう。星華さんが俺の顔を覗き込んで来る。
「どうしたの?」
「いや、なんでも。ただ、やっぱりきれいだなって。」
おお、馬鹿か俺。語彙力がなさすぎる。
「ふふっ。やっぱそうなるよね。あんまり美しいものを見ていると、きれいとしか言えなくなるよね。
それに...」
良かった。変だと思われてなくて。
というか、『それに...』の先が気になるのだが。
いやいや、そうじゃなくて...
背筋をしゃんと伸ばして
「この前は色々とありがとう。家の事とか、相談に乗ってもらって。」
大変な迷惑をかけたので改めてお礼を言う。
星華さんはほのかに笑みを浮かべながら、
「いえいえ、私も心配だったし。何なら心配しすぎて家まで突撃しようとしてたからね...」
と返してくれる。
「それでなんだけど、今度お礼を兼ねてうちに来ないか?
夕食をご馳走したいんだ。父さんも俺が世話になったってことでお礼をしたいらしいし。」
「陽大君の家に!?いいよ。じゃあ、楽しみにしてるね。」
*
帰宅後
「父さん、今度星華さんがうちに来てくれるって。」
「お、そうか。じゃあ父さんが腕によりをかけてご馳走を作るとするか。...ところで。」
何やら嫌な予感がする。
「今日、告って来たのか?」
そんな勇気なかったんだよ!!!!!!