第四十九話
「いてて。」
立ち上がろうと足に力をこめるがうまく立ち上がれない。
「大丈夫?星華さん。」
「すみません。私の不注意でした。」
陽大君が手を貸してくれると同時にぶつかった相手から謝罪を受ける。
「いえいえ、そんなにけがをしていないので。」
「そうですか。それでよかった。」
その老男性は朗らかに笑った。
全体的に白い、おしゃれな格好をしている彼に既視感を覚える。
相手も、そして陽大君も感じ取ったようで、
「「「あの、どこかでお会いしたことが...」」」
*
それから少し。
私たちの姿は近くのカフェにあった。
「そうですか。道理で見覚えがあると思ったら、あの歌がお上手な麗英高校の生徒さんだったんですね。」
彼は夏にあった大会の主催者だった。
当日、表彰式の時に少し顔を見た程度だったから最初は全く気付かなかった。
「その折はお世話になりました。」
「いえいえ。こちらこそ、若い人にはいつも元気をもらいます。
特に今年のあなたたちのグループはすごい何というか、エネルギッシュな感じで、非常に感動しました。」
今更かもしれないが、この人、中身が若い。若すぎる。今年で六十七歳だそうだが、とてもそうは思えない物腰の柔らかさである。
「せっかくここで会ったのですから、こちらを。」
名刺を渡される。
名刺には、株式会社ミーティアプロジェクト 顧問 武田仁、とあった。
「えっ。」
それを見て陽大君が驚きの声を上げた。