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第三十九話
ふと、と言う顔で陽大君が尋ねてくる。
「そういえば、その、手術を受けた少女は今、どうしているんだ?」
「その少女なら手術が無事に成功してここにいるよ。」
そう返すときょとんとした顔をして、
「ここ?...もしかして星華が...」
「さあ?それより」
彼の質問をはぐらかし、言う。
「もう一人で悩まないでね?陽大君を支えたいと思う人は私以外にもたくさんいるんだから。」
それからしばらくして、陽大君のお父さんは手術を受け、無事に成功したそうだ。
退院は二月で、陽大君が見るからにうれしそうな様子で何よりである。
*
陽大はふと思った。
そういえば、少女は、なぜ高校に入った時、歌えていなかったのだろうか、と。
手術は成功してその時には明るい未来しか見えていなかったはずなのに。