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第三十五話

 陽大は家の自室で沈んでいた。


 思い出すのは約一週間前に見舞いに行ったときに父とした会話だ。



 陽大は病の父を見舞いに週一回以上病院へ行くことにしていた。


 中学二年生の時に倒れた父。

 それまで一家を懸命に支えてくれていた父が倒れて入院したことは一家に大きな影響を与えた。


 まず、家事。

 それまで三等分していた仕事を妹と二人で分担してこなすようになった。


 家の雰囲気も変わってしまった。

 明るかった家の空気が重くなってしまったのだ。


 そんなこともあり、早く父に回復してもらいたいと強く陽大は思っていたのだが今年の夏休みに病状が急変。

 慌てて病院に駆けつけると、医師らの処置の甲斐あって回復したが、以前より病状は着実に悪化していた。


 そして前回の見舞いで言われた言葉。


『あのな、陽大。父さん、手術を受けることにする。』


 ガタン


 驚きのあまり椅子を倒す勢いで立ち上がってしまう。


『手術って!!!」


 回復するための大きな一歩となる手術の話は以前から医者からされていた。

 ただし、成功の確率が十%程度と、非常に低く、受けないことを選択したのだった。


 父は難しい顔をしながら言った。


『父さんだって迷った。何せ死ぬのは怖いからな。ただ、このまま入院していてもお前たちの成人は見れないだろうし、それなら手術を受けようと思ってな。』


 冗談めかした言い方だが顔はいたって真剣だった。


『...本気...なのか?」


『ああ。本気だ。さっき言ったのはそうだがもうお前たちに寂しい思いはさせたくない。』


『俺は...俺は父さんが手術で死んでしまう可能性があるなら受けてほしくない!』


 必死に言いすがったが父の言うことは変わらなかった。


『ごめんな。お前の気持ちもわかる。未希(みき)―お前の母さんが二人目の子どもを産むと決めた時、医者に危険だと言われていたんだが未希の決心は鈍らなかった。

 俺や他の親族も必死に止めようとしたんだけどな。

 今なら未希の気持ちがわかる。大事なのは”今”じゃなくて”未来”なんだ。』


 そう強く言われてしまうともう何も言えなかった。

最初の話から順番に改訂、補足、加筆等しているので、あまり変わらないかもですけど、ぜひぜひもう一回読んでみてください。

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