第三十二話
ウルトラ辛は少し辛い程度だった、と皆に言うとものすごい顔をされた。
萌が
「あなたの味覚いかれてるんじゃないの?」
と言うので
「そんなわけがあるわけないじゃん。萌も食べてみる?」
とラーメンを差し出してみると、
「じゃあ一口だけね。」
と言って受け取る。すると、
「何これ...湯気だけで目がいかれそうになるんだけど...」
「まさか萌、食べないの?」
「た、食べるわよ。」
勢いよくすすった萌、その結末は……
*
結果として、その後の萌は壊れてしまった。
口に入れた瞬間ぶっ倒れて、大丈夫かと駆け寄るとすぐに起き上がり、
「ドウシタノ、セイカチャン?」
みんなは同時に思った。こりゃ駄目だと。
翌日。朝登校し、萌の様子を確認するともとに戻っていた。
いったい何だったのだろうか。
*
そして迎えた三日目。
「とうとうライブだね。」
「そうだな。少し緊張する。」
体育館裏で、来夏とストレッチをしながら話す。
「でも、観客の数自体はこの前の大会より少ないし。」
「数の問題じゃないの。ほら、知り合いの前で歌うのって恥ずかしいし。」
「まあ確かに。」
ふと周りを見渡すと陽大君は少し離れたところでライ君と話している。
やはり少し暗い顔をしているように見える。
「あと三十分で開演だって!」
先輩たちと話に行っていたこのみが戻って来て私たちに告げた。
「あと、三十分か。」
「しっかり準備しないとね。」