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第三話

 その日の部活にて


 教室の後部に設置された簡易ステージで朱莉先輩と、昨日のライブで男子なのにアルトパートを担当していた先輩が一年生に話をしている。



「皆さん、ようこそ音楽部へ。私は音楽部部長の天童朱莉です。そしてこちらの男子が...」


「長谷川恭介(きょうすけ)だよ。よろしくね。」



 恭介先輩がウインクをすると一部の女子から黄色い歓声があがる。

 女子に慣れているのだろうか、顔色を一切変えずに説明を続けた。

 まあ、隣に立っている朱莉先輩の目線がたいそう冷たいが。



「今年の入部希望者は二十三人。たくさん入ってくれてうれしいよ。

 それで、早速なんだけど、君たちには班を作ってもらおうかな。」


 朱莉先輩が補足をする。


「班というのは、この先基本的に一緒にライブに出てもらうグループのことだ。

 ずっとそのままってわけではないが、最初はとりあえずって感じだな。

 別にほかの班のメンバーと組んでライブをしても全然構わないんだが。まあ、一旦のくくりとして六人班を作ってくれ。」





 班を作ってくれ、と言う言葉の後の、皆の、特に女子の動きは迅速だった。


 一年生男子の中で飛びぬけて美形な生徒に寄って



「私とグループを組みませんか?」


「あなた美しい容姿してるわね。私と一緒ならきっと輝けるわ。」


「今なら私の班に入れて差し上げますけど?」


「あ、あの、一目惚れでした。私と付き合ってください。」



 自分のグループに勧誘を始めた。


 最後の子に関しては意味が分からないが。さらっと告白して皆ににらまれているが。


 多数の女子らに囲まれた男子は落ち着いて返答をした。



「ごめんね。申し出はありがたいんだけど、俺はもう組む子を決めてるからさ。」



 と言って女子の輪を抜けて私の方に歩いてきた。私の方に???



「俺は君と班を組みたいな。」


「はい???」




 私と班を組みたいと話した彼は望月陽大(もちづきようだい)というそうだ。 



「君の歌声を聞いて、一緒に歌うなら君しかいないと思ったんだ。」


「私人前で歌った覚えがないんですけど。」


「今朝屋上で歌っていたのは君じゃないのかい?」


「ちょっと話をしようか。」



 とりあえず彼を教室から連れ出す。他の生徒は、先輩らも含めてぽかんと敷いた表情で動かなかった。



「それで、私が屋上で歌っていたのを聞いてたの?」


「ああ、屋上で涼もうと思って階段を上ってたらかすかな歌声が聞こえてね。

 あの歌声に勝る声を俺は知らない。だからこそ君と班を組みたい。」



 熱意を感じるが、皆に言っていることと同じことを彼に告げる。



「私は歌えないわ。」



 そう言ったが



「事情は知らないが、歌えるようになるように協力する。それほどまでに俺は君の声に惚れ込んだんだ!」


 間髪入れずに返される。

 熱弁する彼を今一度見る。彼は本心から言っているように思えるが



「それでも...」



 断ろうと思ったところで、



「私はいいと思うよ。星華が今は歌えないのはわかってるけど、チャレンジだけでもしてみないか?」



 来夏が私たちの会話に参入してきた。来夏だけじゃない、



「私もいいと思う!望月君は星華が歌えるように手伝ってくれるんでしょ?」


「あ、ああ!もちろんだ!」



 このみも参入してきた。



「駄目なら駄目でもいいんだよ。私はもう一度、星華に歌えるようになってもらいたい。」


「そうだよ!!チャレンジだけでもしてみよ?」



 懸命に私の背中を押そうと声をかける親友たちの姿に胸が熱くなる。

 そして、心を動かされ、



「分かった。やってみる。」


「じゃあ...」


「うん。よろしくね、望月君。」


「よろしく。永田さん。」



 こうして私は音楽部で歌うことになったのだった。

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