第二十五.二話
曲も終盤、サビに入り私の出番となった。
私がサビを担当することになったのは他のメンバーからの強い推薦にあったからだ。
”この歌のサビを担当できるのは星華しかいないわ。”
と萌。
”星華が歌うからこそこの歌の真髄を魅せられるんだよ。”
と来夏。
”え?サビは星華さんが歌うんじゃないの?”
と陽大君。
ここまで言われたら目一杯歌うしかない。
そういうわけで今日まで練習を重ねてきた。その歌を、今、ここで聞いている全ての人に届けよう。
*
「八十億分の一人の君と君と君と手をつないで前を向こう。」
後ろで支えてくれるみんな ―萌、来夏、このみ、ライ君、ベースを担当してくれている小栗君、そして陽大君― の顔を振り返る。
皆力強い、頼もしい視線を返してくれる。
観客席を見ると、今日は共にステージに立っていないものの、いつも私たちを支えてくれる嶺亜君や、恭介先輩、晴先輩、朱莉先輩がしっかり見ていてくれている。
「光が見えなくたっていい。ボクらならきっときっと未来へ届くはず。」
ふと、音楽部に入った時のことを思い出す。
当時は歌うことができず、こうやってライブに出ている姿なんて想像もつかなかった。
でも、今こうして多くの観客の前で歌っている。
未来は良い方向へ変えられる。そう身に染みて感じた。
「さあ、手を結んで、次のステップに飛び出して、物語の糸を紡ごう。」
この歌を聞いている全ての人に幸あれ。
願わくばこの歌で、過去の私のように光が見えない人を照らせますように。
「この『キズナ』があればどこまでも行けるはず!」