第二十四話
無事迷うことなく会場入りし、実際に披露するホールを陽大君と下見を終えて集合場所に戻るとちょうどみんなが来ていた。
「二人とも早いな。」
「いや~迷いそうで怖くて...」
「連絡くれれば私が連れて行ってやったのに。」
「いつも頼りっぱなしだからさ、たまにはね。」
来夏は少し不服そうな顔を見せたものの、引き下がってくれた。
陽大君もそうだが、私の周りには優しい人がいっぱいなのだと思うと心が温かくなった。
*
さて、私たちが参加するこのアカペラ大会は同地方の高校から約二百を超えるグループがエントリーをしている。
ここでの結果が特にほかの大会などに影響するわけではないが、スポンサーに音楽機器メーカーの名前があることから、一部の有識者の注目を浴びていることは確かなのだろう。
そういうわけもあって、今年で八度目の開催なのであるが、報道らしき人の姿も見られる。
「うう、緊張する...」
多くの人に見られていることを自覚せずにはいられないわけで、緊張しない方が難しい話である。
すると、
「そんなに緊張することはないわ。」
と萌が声をかけてくれる。
「あなたの歌はここにいる誰よりも上手。それだけは真実なんだから萎縮せずに歌ってちょうだい。」
「ほんとだよ。星華さんほどの歌い手、そうそういないんだから。」
陽大君も励ましてくれる。
「よし。少し元気が出てきた。」
自分の両頬を軽くたたいて気合を入れる。
「私たちの本番まであと一時間くらい。頑張ろうね!」