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第十七話

 本番前の準備を終えて、ライブが始まる。

 トップバッターは恭介先輩のグループだ。



「今日は皆さん、お集りいただきありがとうございます!!麗英高校音楽部です!!」



 会場が熱気に包まれる。恭介先輩の声に観客が応え、より一層ホールが熱くなる。



「それでは、トップバッター、聞いてください。」




 ライブは極めて順調に進んだ。

 どのグループも特にミスはなく、むしろこの空気に()てられて実力以上の歌を披露していた。


 そして今、ステージ上では7番目のグループ、つまり夢里さんたちが歌っていた。



「♪♪♪」



 すべてのパートがバランスよく歌い、とてもきれいに聞こえた。

 夢里さんもミスなく、滑らかに、リズミカルに歌い上げる。



「さすが、夢里さんたち。上手だね!」


「ああ、とても上手い。」


「こういうのを見せられると僕、一層緊張しちゃうな...」



 舞台裏で皆が口々に賞賛している声が聞こえるが星華は少し違う印象を持った。



 確かに上手だ。非の打ちどころがない、のであるが。



「何かが足りない。」



 彼女の個性がない。


 ほかのグループに比べて突出した”何か”がない。


 そしてなにより、彼女の顔が寂しそうに見えるのだった。



 夢里さんたちのグループの番が終わりいざ私たちの番だ。


 準備万端。私たちの初ライブがとうとう始まる。



 舞台裏から出てセッティング等を軽く済ませ...


 光り輝くステージに立ち、マイクを構えて笑顔で言う。



「聞いてください、『一番星』。」



 ワン、ツー、スリーと望月君が小声で掛け声をかけて旋律が奏でられる。


 軽快なイントロに観客が一気に乗っかってくる。


 そして私の出番だ。



「歩いてきた道を振り返る。美しい思い出ばかりじゃない。楽しい思い出ばかりじゃない。」



 横を見ると来夏がウインクしてくる。まるで”大丈夫だ”と言わんばかりに。



「それでも僕らは歩くことをやめない。」



 みんなの声が重なり合い、美しい旋律となってホールに響く。


 そして曲はあっという間にBメロに入る。



「どうして僕らは歩き続けるのか。何が僕らをそうさせるのか。見上げればそこに答えはあった。」



 サビへ突入する。



「光り輝く一番星があった。美しい光。たったそれだけの理由だけど、僕らには十分すぎる理由だった。

 いつまでも輝く星に魅せられて僕らはどこまでも旅をするのだろう。」



 そして曲は終わる。


 短い曲だ。ただ、そこに込められた意志を、思いを歌いきることができただろうか。後ろをみると望月君が大きくうなずいた。


 そうか、私、ちゃんと歌えたんだな。



「ありがとうございました!!!!」



 私たちがステージから降りても観客の拍手はやまなかった。




「何なの、これ...私の歌とは比べ物にならない。

 一人で突出してるわけじゃないけど、全体を底上げするような歌...」



 多くの観客が盛り上がる中、ただ一人、驚愕と畏怖のまなざしを星華に向けるものがいた。



「こんなにすごい人に宣戦布告をしてしまったなんて...」



 それは橙色の髪の少女、夢里萌であった。

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