第十二話
翌日から本格的にその曲の練習が始まった。
パートはリードが私。ソプラノがこのみ。アルトが来夏。テノールが望月君。ベースが岸君。そしてボイパが香坂君に決まった。
ボイパなど、技術が必要なパートは先輩と一緒に練習をしている。香坂君は朱莉先輩と組んでいたボイパの先輩に教わっている。必死に思った通りの音を出すのに苦戦しているようだが頑張ってほしい。
ほかのメンバーは空き教室でそれぞれ練習している。
「私も頑張らなきゃ。」
もらった譜面を見る。
どんな曲かはすでに何回も聞いているから分かるから最初の部分をハミングしてみる
「ル、ルルルル♪」
と、
ドタドタドタドタ
というものすごい物音が背後から聞こえてきた。
反射的に音の方向を見ると...目がキマッているやばい人が立っていた。
「キャァァァァ―――――」
私の叫び声が校舎中に響き渡り、警備員さんが駆け付けたほどよく響いたそうだ。
*
「いや~すまないすまない。新入部員たちの様子をこっそり観察していたんだが君の声が美しすぎてね。」
「どこぞのナンパみたいになってんぞ。」
「ナンパとは失敬な。彼女いるし。」
入ってきたのは黒髪が美しい男子生徒、月詠晴先輩と恭介先輩だった。晴先輩は麗英高校の生徒会長でもあり、女子生徒からの人気も高い。
そんな彼だが、音楽部所属であるということだけはほかの先輩から聞いていた。
とりあえず恭介先輩と漫才を繰り広げているので止めに入る。
「あ、あの。」
二人が同時にこちらを向く。
「ああ、やっぱ君もそう思う?」
「いや、永田さんがそんなこと思っているはずがないだろ。」
「なんの話ですか?」
「「味噌は赤派か白派かって話」」
「どっちでもええわ。」
つい関西弁になってしまう。
というか後輩を放って何の話をしているんだ、この先輩たちは...。
そして十分後。
「結局コーヒーか紅茶かだったらコーヒーのほうがいいな。」
「俺もそう思う。」
まだどうでもいいことを話していた。