第十一話
その帰り道
「歌うの楽しみだね。」
「そうだな。ただ、無理はするなよ。また歌えなくなったら...」
「大丈夫。多分だけどね。もう心配はかけさせないから。」
昇降口への階段を降りると、踊り場に見覚えのある女子生徒が立っていた。
「あら。ちょうどいいところに降りてきたわね。」
薄いオレンジの髪色をサイドテールに束ねた女子、夢里萌がそこにいた。
「あなたたち、今日の部活で選択した曲をどこで披露するか知ってる?」
「いや、知らないけど。」
「六月の頭に音楽部によるコンサートが開かれるの。そこで私たち一年生はデビュー予定なのよ。」
「へえ。」
萌は挑戦的な笑みを浮かべて言った。
「そこで、私の歌とあなたの歌、どちらの方が盛り上がるかを勝負しましょう。」
「?」
「そこで私の方が会場を盛り上げることが出来たら、あなたたちは解散しなさい。」
「え?」
「当たり前じゃない。私に負けるようじゃとても望月君と組むのにふさわしくないわ。まあ、私が負けることはないでしょうけど。」
星華は混乱した。突然出された突拍子もない一方的な条件に対して微かな怒りを抱きながら提案を拒もうと口を開く。
「それは...」
「いいよ。」
「へ?」
すると来夏が萌の提案を承諾した。
「いいじゃん。私は星華が負けるとはとても思えないし。」
「随分自身があるのね。」
「私の幼馴染をなめないでくれる?」
その目には激しい炎が揺らめいていた。普段物静かな来夏からは考えられないほどの感情の振れ幅である。
「私は星華以上に歌が上手い人を知らない。」
「ふうん。そ、まあ、私が負けたら土下座でも何でもしてあげるわよ。」
「その言葉、覚えておくから。」
と来夏が言うと、萌は去っていった。
*
「すまん。なんか熱くなって勝手に話進めちゃって。」
「ううん。私は嬉しかったよ。」
あれほど夢里さんにひどく言われて私も内心腹を立てていたが、言い返す勇気がなかった。そんなところで来夏が代わりに怒ってくれたのだ。責めるどころか感謝したいところだ。
ただ、
「私、勝てるのかな。」
心配なのはその一点のみだ。
「大丈夫。さっきのは本心から言ったから。小学生の時に数回聞いただけだけど、今でも鮮明に思い出せ
る。あの星華の美しい歌声は...」
「なんか恥ずかしくなってきた...」
テスト終わったので少し更新速度上げれるかもです。
ただ、六月末ごろにまたあるのでご了承くだされ。