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第4話「探しましょうドラマーを(2)」

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放課後、アリスは早速部室へ行き自分の好きな曲を弾いたり、適当なフレーズを演奏したりしてギターを楽しんでいた。


そこから遅れて美步がやってくる。彼女もカバンを置くとともにギターを弾き始める。

数週間が経ったが、もうそこには「新たな日常」が作られようとされている。


そんな中でアリスは口を開く。



「そういや今日ドラマー候補1人誘ったんですよ!」

すると美步はパッと顔を上げる。

「えっほんとに!?」

「もちろんっす!!友達の友達、なんすけど動画見せてもらったんですよ。」

「もうめちゃくちゃ上手くて!!ツインなんすよ。音粒もバカ綺麗で……。」

「それは最高だね!!」

「ただ……。」


アリスが言葉を濁すと、美步は不思議そうにアリスの顔を見つめる。


「大怪我して元々いたバレー部も辞めちゃったらしく、ドラムも辞めたらしくて。今も葛藤してる感じで……。」


暗い顔をしたアリスに美步はなるほど、と言わんばかりの息をひとつ吐く。別にそこにマイナスな感情なんてありはしない。

そこで先輩らしくひとつアドバイスすることに。


「ならさ、その居場所、私たちで作っちゃえばいいんじゃないかな。」

「へっ?」

「バレー部ができなくてあるはずだった『居場所』がなくなっちゃったなら。」

「私たちが彼女の好きなロックで『居場所』、作っちゃおうよ。」

「私が、そうしたんだから!!」











誘われた日から何日か紗奈は体育館へ足を運ぶ。

ただその足どりは少しどころかだいぶ重い。バレーが嫌いなわけではないし、やれるならやりたい。

それでもやっぱりトラウマが先走ってしまう。あの時の「ブチッ」と切れる脚の音が、否応でも耳に残っている。


もう一度言うがバレーが嫌いになったわけではない。バレーの試合も見るし友達の試合も見たりする。

それでもやろうとなると、足がすくむ。ジャンプしたくても脚が飛ぼうとしても動かない。


トラウマというのはとても厄介だ。



何日かは窓から見ていた。今日こそは扉を開けようと決心したが、結局紗奈は体育館の扉で立ち止まってしまい、扉に手をかけても震えて開けられなかった。

そして少し移動し、いつものように離れにある窓から眺める形でバレー部の活動を眺めた。





「なにやってんだろ、アタシ。」



そんな風に呟きながら右脚をさする。無理してでもやりたいけど脚が動かない。そんなの自分がもどかしくて、嫌い。


そしてその脚のおかげでドラムも満足に踏めない。ロックも嫌いになったわけじゃないしむしろ好きな気持ちが倍増している。


だからこそ、だからこそ叩けない自分がもどかしい。

負のスパイラルに陥ってしまう紗奈は自己嫌悪によく陥ってしまうのだ。






「何やってんの?」

隣から突然話しかけられると、顔を勢いよく向く。

そこには汗をかき、スクイズボトルを片手に練習着を着て水を飲む蜂屋が立っている。



「あんた休憩?」

「そうだよ。10分ちょいくらいかな?」

「そう……。」


蜂屋が話しかけても空返事。上の空のような目線をする。それを見かけた蜂屋はひとつため息をつく。



「もうあんた、バレーに執着するのやめたら?」

「なっ……!!」

突然の言葉に紗奈は怒りそうになる。

「あんたにバレーの才能はあったのは知ってる。それと同じくしてドラムの才能もある。ドラムをやっちゃいけないわけ?」

「でもアタシはバレーをやりたいの!!あのまま悔しいまま終わりたくないの!!」


声を荒げて大声を出してしまう。身振り手振りをして主張するも、蜂屋の表情や態度は変わらない。


「じゃあなに、あんたのドラムに対するその想いはその程度なの!?」

「そのトラウマを無理やり払拭しようとして、そっからまた苦しい想いをしたら本末転倒じゃないか!!」

「何を言ってんの!?」


その言葉に紗奈はつい、彼女の胸ぐらを掴む。


「どれだけアタシが悔しい想いをしたか知ってんの!?ハッチとまたバレーしたくてしたくて仕方なかったのに!!」

「ドラムだってそう!!右脚がままならないから、踏もうと思っても踏めない。そのもどかしさが、あんたにわからないでしょ!?」







「そうだよ、わからないよ!!」







「わからないからそうやって私は言える。私はあんたの笑顔が見たいの。」

「きっかけはなんでもいい。だけどあんたが今バレーをしたら、また苦しい想いするのがわかる。無理してるもん、今のあんた。」

「それに対して音楽は?あんたは全く無理してないどころか、どんどん好きにってる。あんたが語る時の顔はとても楽しそうで、嬉しそう。」

「嫌いだったらあんたの好きなジャンルのロック、進んで聞かないでしょ。」

「だから言ってんのよ!!」



早口になり、ハッキリ自分の意見を言うその表情に紗奈は胸ぐらを掴んでいた手を離す。



「それに一回軽音部行ってみたら?」

「ドラムを踏めるようになるキッカケももしかしたら見つかるかもだし。」

「っ……。」


まだ迷っている紗奈に、最後に一言蜂屋は想いをぶつける。


「怪我とは言えなくなった『居場所』は、もう戻らない。」

「それなら新しい『居場所』をあんたが作ってみなさいよ!!」




それだけを言い残しドンっと、紗奈の胸を押し退けてすぐに体育館に戻って行った。


後ろ姿をただ茫然と眺めるだけに終わったが、それと同じくして蜂屋が言った「あんたの笑顔が見たい」という言葉を思い出した。


蜂屋がドラムでみんなを笑顔にし、居場所ない者に「居場所」を作られたら……。今居場所に困る紗奈にとって、最大の目標になり夢になる。


まだ自分がバスドラムを踏めるという確信はない。

ただそれだけ彼女が言うのなら、もしかしたらどこかでキッカケを見つかれるかもしれない。

今まで見つけられずできないと判断した途端勝手に辞めてしまった自分の姿に、どこか後悔すらも覚え始める。




そして何より自分がアリスに言った言葉を思い出した。

自分をドラムをやろうという気を起こさせてくれるほどの実力の持ち主なのか。


確かめるために、そして自分に投げかける疑問とどこか希望に賭ける欲望と。


どちらの気持ちも交えながら、体育館に背を向け軽音部の部室へと足を運ぶ。


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