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第12話「みなさん初めまして!」

いつもご覧いただきありがとうございます

ついに待ちに待ったライブ編です


ぜひ最後までごらんください

「大丈夫だよアリス。なんだかんだ赤点ではないはずだから!」

「そうだよね……だよね……。」


体育館の舞台裏で待機しているアリスたち御一行。

生徒会の粋な計らいということでテスト終わりにストレス発散させたい生徒たちがたくさん体育館に集まっている。


仲のいい子がやってきたり、クラスメイト全員が来たり、はたまた興味を持ってやってきたりもその数は100はゆうに超える。


100人以上の観客が観にくる中での初ライブというのはなかなか体験できることではないし、はたまた全国ライブハウスを行脚する売れないバンドマンも100人をいれることは難しい。


つまり最高の環境でできるということだ。




一方で千景も緊張からか震えている。

紗奈以外は初めて人前で演奏すること、そこを追い討ちかけるように初めて大勢の人前で何かをする千景にとって緊張するなという方がおかしい。


美步自身も初めてだが意外と落ち着いており、紗奈もどっしりと構えている。

これではライブにならないと踏んだのか、紗奈が一つ2人と肩を組む。




「おめーらよ、たくさん練習したじゃねえか。」

「音楽好きだろ?好きになったんだろ?」

「自分たちの味が出せるチャンスだぜ?」

「緊張して出せなくなるのはもったいないぜ。」




丁寧に話し、また気持ちが上がるようモチベーターとしての役割も果たしていく。

その光景を美步は「流石だな…….。」と眺めていた。本来なら歳上の役割なのだろう。

ただここは同い年が行うことで発揮されるということもあり得る。


すると2人の表情も最初は緊張で硬く、怖気付いていたがだんだん表情が柔らかく、闘志に燃える意気込んだ表情を見せる。



「リハしたし大丈夫だろ?」

「うんっ……。大丈夫!」

「どんだけミスってもいいからな、アタシらが全力でカバーするからな!」

「ありがとう……っ!」


美步も肩を組み、円形になる。



「初ライブ、ぜってー成功させるぞ!」




紗奈の意気込みにアリスも「っしゃあっ!」と声を張り上げ自身の気持ちをマックスまでボルテージを上げていく。


そんなわけで生徒会が「軽音部の皆さん、よろしくお願いします。」とアナウンスが入れば、アリスを先頭にしてステージ前に設置されたドラムセットやギタースタンドへ歩き始める。


ステージではなくその下……観客と同じところで演奏する理由はただ一つ。






「パフォーマンス重視」で貫きたいというところだ。

軽音部と言う存在が知られていない、はたまたロックそのものがしられていない。

そんな中でステージで演奏すれば盛り上がりはするだろう、ただ「疎外感」や「距離感」というのがライブという一体する場所でも起こり得る。

自己満足で終わってしまう可能性がある、ということだ。


やはりファーストインパクトとなれば同じ目線で、演者と観客という立場で一つとなりライブを作る。

それがアリスの考えだ。



促されて入れば、拍手であったり、はたまた指笛など歓迎されている様子が見受けられる。

そこにまず一つ安堵のため息を吐く。



更には体育館の床ということもあり、オールスタンディングという全員が座ることなく立っている。

アリスの前にはバーが上に置かれたコーンが並べられており、観客がなだれ込んでくることはない。


ただあまりの観客との距離の近さにアリスはギョッと目を丸くする。



観客としてライブやフェスは何度も見に行った。演者との距離も近かった。理解していたつもりだが演者として立つと、無数にいると思う観客が、表情なんてわからないと思っていた。


しかしそんなことはなくてはっきり一人一人の表情が見える。

その最前には蜂屋や吉留の姿、それ以外にも仲良くさせてもらっているクラスメイトの姿もある。


蜂屋はグッと拳を作りファイトを送り、吉留は手をひらひらと振って応援してくれているようにも見える。




来てくれたことに嬉しくなったアリスは全員が持ち場につき、弦楽器隊がギターを担いだことを確認すると、笑ってコードを適当に、そしてはやく掻き鳴らす。


彼女の脳内が「カチッ」とスイッチが入った瞬間だ。

そう、エフェクターのスイッチを足で踏んだように。




曲の始まりではない。ソロである。

それに合わさるようにドラムもハイハットスネアやバスドラムと様々なタムを適当に高速に叩き、ベースとリードも適当に弾く。


音が奏でている、音が衝突しあっている!



それだけでアリスは嬉しくなる。



そしてその光景を見る観客たちも大いに盛り上がる。

わからないなりに始まるライブの前兆。ただギターやドラムが鳴るだけでもそこからは「非日常感」の始まりだ。


ギターをかき鳴らしながらアリスはマイクスタンドの前に立つ。

これからの自分の一言一言や歌詞を歌う声が全て自分のライブに直結する。

失敗すれば不評価となる。


自分がライブの雰囲気を良くし壊す。そんな責任重大感を背に受け、つい笑う。

オーディエンスに向けて大声で叫ぶ。

ギターを鳴らす手は止まることを知らない。






「皆さんどうもこんにちは!!」

「勢北高校軽音部、『Stoked Evning』です!!」

「まずは皆さんテストお疲れ様でした!」

「そしてこのライブに来てくださりありがとうございます!」





観客からの歓声が上がるとそのままアリスは続ける。




「テスト終わりというみんなの開放感を私たちは手助けしたい!」

「そして私たちは今日、部としても初めてのライブです!これからたくさんみなさんにお世話になります!」

「皆さんを大いに盛り上げますのでよろしくお願いします!」





MCを言い終えると、スネアを叩くスピードが徐々に遅くなりそのスピードでハイタム、ロータムを叩き、最後フロアタムで「ドドン」と一度締めると、アリス、美步、千景3人はドラムの方を向きジャンプしてギターを鳴らす。






同じタイミングで紗奈もシンバルを叩く。

それだけで4人の充足感を満たす。





ただここからだ。ここだけで満足してはいけない。

みんなを盛り上げるということ、そして「軽音部の存在を知らせること」と「ロックを伝えること」という義務がある。

デビューライブさながら、彼女たちにとって最初の勝負が始まろうとしている。




オーディエンスとのバトルが、始まる。

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