その95 どっちの意味
何か文句を言いたそうなマイ。知ったふうな口を利くなとか言いそうだ。
「知ったふうな口を利くな、部外者のくせに」
ほら言った。俺はまたも肩をすくめる。
「仰る通りで。だが、部外者は部外者でも、いまはファラのパートナーだからな。パーティーの」
「く……ああ言えばこう言う」
「そんなことより、何の本取ろうとしてたんだ? 取ってやるよ」
「別にいい。自分で出来る」
「倒れそうになってたくせに」
「く……」
悔しそうにするマイ。俺はさっきマイが手を伸ばしていた書棚の上の方に目を向ける。確か、この辺りだったはず……見当をつけた箇所に手を伸ばす。
「これか?」
「違う。その右隣だ」
取ってもらおうとしてるじゃねーか。
俺はその本を手に取る。自然と本のタイトルが目に入った。
『怪奇! UFO・オカルト特集! 宇宙人は実在した⁉』
「…………」
俺はマイを見た。
「そ、そんな得も言われぬ目で見るなっ。わ、わたしが読むわけじゃないっ」
「じゃあ誰が読むんだよ?」
買おうとしてたくせに。
「奥様だ」
「奥様? ファラの母親か?」
「そうだ。奥様は最近そういうのにハマっていてな。そういえば今日出る新刊を買い忘れたと言ってたんだ」
これがその新刊ってわけか。
「それで買ってくるように言われたのか? わざわざこんな夜にご苦労なこって」
「誤解してるみたいだから言うけどな、奥様はそこまで人使いは荒くない。これはわたしが自分で奥様の為に買おうと思ったんだ」
そういやファラが、マイは気配りの出来るいい子とか言ってたような言ってなかったような。
「それでわざわざここまで買いに来たのか。ファラん家の近くにも書店くらいあるだろうに」
「売り切れてたんだ。どうやらわりと人気の本のシリーズらしいから」
これが?
「わたしにはいまいち分からないけど、こういうのが流行ってるらしいんだよ。ありきたりな日々を忘れさせてくれる刺激が詰まってるって」
「……俺にもよく分かんねーな」
こちとらクエストをこなして日銭を稼ぐ毎日だからな。不可思議なものを見る目で、俺は手に持つ本に視線を注ぐ。まあ確かに書かれてる内容は不可思議なものを取り扱っているが。
つーか、普段戦ってる魔物とかスキル持ちとかが既に不可思議だと思わんこともないが。
「いいからさっさとよこせっ。もうすぐ閉店時間なんだからっ」
そんな俺から、マイはひったくるように本を取って、早足でカウンターへと向かっていく。と思ったら、一瞬立ち止まって、背中を向けたまま。
「本を取ってくれたり倒れるのを助けてくれて、ありがとうなんてこれっぽっちも思ってないからなっ」
そう言ってから、再びカウンターへと向かっていった。
……やれやれ……これはどっちの意味なんだろうか?




