その92 日没後
それから俺達は燻蒸が終わるまでの間とりとめもない世間話をして、燻蒸が終わった後はその後片付けをしていった。死骸がごろごろ、うへー。
「あ、そうだジークさん、この後どうします?」
後片付け中にファラが聞いてきた。
「成り行きとはいえ、せっかくこうして会ったんですし、午後はクエストをしますか?」
昨日の今日だというのに、ファラは元気だな。
「いや、実はまだ少し寝不足なんだ。寝ている最中に無理矢理起こされたから」
「あ……すみません……」
「いや、ファラを責めたわけじゃなくて」
どっちかというとマイのせいだし。
「だから、この片付けが終わったら、俺はまた寝るつもりだから。今日のクエストは当初の予定通り、なしの方向で。ファラも帰ったらちゃんと寝ろよ、まだ目の下に少しくま残ってんぞ」
「……っ⁉」
ファラは慌てて顔を背けた。俺は苦笑する。
「そ、そうですねっ。今日は帰ったら眠って、体力を回復させておこうと思いますっ」
「ああ。明日はまた朝に集まってクエストをやりに行くからな」
「は、はいっ」
そうして燻蒸後の片付けも終えて、麻雀の相手をしろとしつこく誘ってくる大家を無視して、俺は自室で眠りに就き、ファラは自宅へと帰っていった。
日没後。
暗い部屋の中で俺は目を覚ます。暗いとはいっても、カーテンを閉めていない窓から、アパート前の道路の外灯の明かりが入ってきていて、室内の輪郭はおぼろげながら見えていた。
俺はベッドから出て、とりあえず部屋の明かりを点ける。安アパートではあるが最低限のサポートアイテム、もといサポート家具は揃っていた。
天井の照明が照らすオレンジ色の光の中、俺はのそのそと食料保管庫へと向かう。保管庫といっても会社や店で使うような巨大なものではなく、家庭用で、なおかつ一人暮らし用の小型のものだ。
昨今の家庭用サポートアイテム、通称サポート家具は以前よりも便利になったもんだ。一辺が数十センチほどのこの保管庫は収納アイテムの一種であり、食べ物を長期間保管することに適していた。
もっと高級なものでは、保管するだけではなく冷蔵や冷凍、加熱機能なんかもついているらしい。自分の好みに合った温度ですぐに食べることが出来たり、冷凍状態にすることでさらなる長期保存も可能らしい。
本当に便利な世の中になったもんだ。
ぐう。腹の虫が鳴る中、俺は保管庫の扉を開ける。ブラックホールのような黒い空間が見えるが、食べ物の姿は見当たらない。
(食いもんないか……)
一覧表示機能があればすぐに分かるのだが、安物のこれにそんな便利な機能はない。黒い空間内を一通り見渡したが、やっぱり食べ物は見つからなかった。




