その91 成功させてみせる
「貴方をうちに置いてから、もうしばらく経ちます。貴方は一所懸命頑張ってるし、私達家族や他のハウスキーパー達も助かっています。でもね」
踏み込んだのは、ファラがマイの雇い主だからだろう。俺はあくまで部外者だからうやむやに出来るが、直接の雇い主である以上、それは出来ない。
「もし今後、また同じようなことが起きれば、私達ももう貴方と一緒にはいられなくなるかもしれません。そんなこと、私は嫌です。だから教えてください。同じことを繰り返さない為にも、私は貴方の理由を知る必要があります」
「……っ」
何故マイは俺を襲撃したのか? ファラには見当がついているのかは知らないが、俺にはなんとなく見当がついていた。
「それは……っ」
マイが口を開く。本当はあまり言いたくないというような口調で。目を伏せて、ぎゅっとメイド服の裾当たりを握りしめて。
「……その男の部屋を襲撃すれば……っ……こんな危ないメイドと一緒にいるお嬢様なんかとパーティーなんか組めないって、そいつがお嬢様から離れると思ったからです……っ」
「マイ……」
メイド少女が顔を上げた。その顔にはもう怒られたことに対する反省は見えず、俺へと人差し指を突きつけてくる。
「あっはっはっ、ジーク=フニール! 今日は失敗したけど、お嬢様に免じてとりあえず見逃してやるっ! でもわたしは諦めないからなっ、次こそは必ずや成功させてみせるっ!」
「マイっ!」
やれやれ、全然反省してねえな。
「それではお嬢様、わたしはお先にお屋敷へと戻っております!」
最後にそう言って、マイはスキルの箒を出すと、さっきみたいにそれに飛び乗って猛スピードで上空へと去っていってしまった。
まだ燻蒸剤を使った後の片付けとか残ってるんだけどなあ。あ、そうかあのメイド、死骸の片付けが嫌だから逃げやがったのか!
「……すみません、ジークさん、うちのハウスキーパーが失礼をして……」
ファラが言ってくる。本当に困ったように眉を八の字にしていた。
「ハウスキーパーの仕事は真面目にしてくれるし、色々と気が利く良い子なんですけど……。少々落ち着きがまだ足りなくて……」
「あー……まあ、良い奴だってのは分かるけどな。ファラのことをちゃんと考えてるみたいだし。今回だってファラの為にやったみたいだし」
俺的には一方的にトラブル発令宣言をされたわけだが。
「だとしても、ジークさんや他の方達に迷惑を掛けることは見逃せませんから。家に帰ったらちゃんと言い聞かせておきます」
「あ、うん、それはよろしく頼む」
果たしてどれだけ効果があるか分からないが。まあ、また来たら、その都度追っ払っていこう。何度も繰り返せば、いずれ諦めるだろう。




