その85 大家の部屋
「ジークさん、この度はうちのハウスキーパーが本当にご迷惑お掛けしました。誠に申し訳ありません」
そう言ってファラは頭を下げて、隣にいる少女にも頭に手を置きながら、
「ほら、マイもちゃんと謝りなさい」
「ご、ごめんなさい」
なんか……悪戯をした子供とその保護者みたいだな……。
「あ、ああまあ、ちゃんと謝ってくれんなら……」
「本当に申し訳ありませんでした」
俺の返事に、ファラはもう一度謝罪の言葉を言うのだった。
それからファラはマイとかいうメイド少女を連れて、というか半ば引っ張って、俺のアパートの大家や住人に謝りに行くと言って……俺もアパートに戻る手前、彼女らを案内することになった。
大家が怖えーから本当は戻りたくねーんだが、戻らなかったら戻らなかったで、余計面倒で怖そうなことになるので、戻らざるを得ない。誰か身代わりになってくんねーかな。
アパートに到着すると、ファラはマイを連れて一部屋一部屋訪ねて頭を下げていく。中には不在で難を免れた部屋もあり、また男連中はむしろわざわざ謝りに来てくれたファラ達を見て嬉しそうにしていたりもした。つーか鼻の下を伸ばしていた。
「おいこら待てジーク」
何故か名指しで呼び止められる。ファラ達から謝罪を受けた後の大家だった。ファラ達はまだ他の部屋の謝罪に行っている。
「あの二人の謝りは分かった。だがまだてめーから謝られてねーぞ」
「いや何でだよ。むしろ俺は被害者だぞ」
「このオレのでこに金をぶつけやがったじゃねーか! ああん!」
メンチ切ってきやがる。マジでただの不良じゃねーか。
「いやそれはあんたが金を投げてきたから、身を守る為にそうしただけだろーが。どっちかというとあんたが原因だろ」
「うるせー! いーからこっち来い!」
「痛った、引っ張るなよ、意外と馬鹿力だな」
「てめーが言うな!」
そうして何故か大家の部屋に連行される。え、マジで何されんの⁉ まさか誰にも見えないところで私刑とかじゃないよな⁉
大家の部屋は散らかっていて、床には空になった酒瓶や破れた雑誌や下着なんかが転がっている。窓際には洗濯物が干しっぱなしだし、台所には開封された食い物の紙袋なんかが散乱してるし。
普通に汚ったねーな。
「おい⁉ いまそこで何か動いたぞ⁉」
「あーん? ねずみとか虫とかじゃねー?」
「げー⁉ あんたよくこんなとこで平気で暮らせるな⁉」
「住めば都。二度あることは三度ある。慣れりゃあ気にならなくなるぜ」
マジかよ⁉ こんな奴が大家とかマジかよ⁉




