その82 メイド少女
「こちとら完徹麻雀の後のお昼寝の最中なんだ! 邪魔すんならしばくぞおらぁ!」
『ひ……っ』
なんかいまにも泣きそうな声がしたぞ。うちの大家は怖えーからな。とにかく大声女が怯んでいるうちに逃げよう。
『あ、あの、ここにジーク=フニールさんがいらっしゃると伺って来たのですけれども……』
「ああんっ⁉ ジークに用があるだとぉ! あの脳筋馬鹿またトラブル起こしやがって!」
言い掛かりだ! これは俺のせいじゃなくね⁉ え、俺のせい⁉
「ジークしばく! こっちだついてこい!」
『は、はいっ』
厄介な奴が増えやがった! とにかく早く逃げるぞ!
俺は窓を開けて外へと飛び出す。同時にばたんっと開かれる玄関のドア。逃げ走る俺の背後から大家の声。
「あの野郎逃げやがった! 追え!」
「はいー!」
ドタドタと俺の部屋を走って窓から飛び出してくる音。くそっ! 靴のまま入りやがって!
「逃げんじゃねえジーク! くらえ!」
やべえ! あの大家金投げてきやがった!
ひゅんひゅんと硬貨が俺の衣服をかすめていき、細い切り痕を作っていく。なんで金で切れるんだよ⁉
「だから逃げんじゃねえ! 稼いだ金がなくなんだろうが!」
「投げなきゃいいだろうが!」
こんな硬貨で足を切られて走れなくなったらおしまいだ。俺はその場で振り返り、飛んでくる硬貨に拳をぶつける。
「何⁉」
ぶしゅっと拳が切れるが、同時に硬貨を殴り飛ばし返して、
「しまっ……⁉」
大家の額に硬貨をぶつけた。何かのスキルを使ったのか、あるいは解除したのか、大家は額を切ることはなく、だがぶつかった衝撃で仰向けに倒れていく。
「覚えてやがれジーク……!」
倒れ様に中指を立てる大家。怖ええ……もうあのアパートに帰りたくねーよー。
「後は任せたぜ、メイド服の嬢ちゃん」
「は、はいっ」
無駄にカッコつけんじゃねえ大家!
メイド服の女……見た目的には少女と思わしき奴が続けて追いかけてくる。へっ、一番怖えー大家を撃退したんだ、あいつがどんな奴だろうがもう……。
「『ハウスワーク』……『ブルームブルーム』!」
と思っていたら、メイド少女の手に一本の箒が出現した。彼女はその箒を空中に放ると、その柄に両足で立って乗る。
「発進!」
少女が言うとともに、箒が猛スピードで俺へと飛んでくる。マジかよ⁉
「魔女かてめー⁉」
「問答無用!」
昨夜の疲労も残ってるし寝起きとはいえ、全速力で走ってんのに瞬く間に追いついてきやがった。
「『クロスダスター』!」
少女の手に、今度は掃除で使うはたきが現れる。棚とか家具の埃を払うあれだ。




