その81 ハウスキーパー
かちゃり。
通信アイテムが留守録に切り替わった。ただいま留守にしておりますというお決まりの登録メッセージの後に、女の声……ファラの声が聞こえてくる。
『ジークさんっ⁉ 良かった、いまはご自宅にいないんですねっ⁉』
慌てた声。何をそんなに慌てているのか。
『先ほどうちの執事がジークさんのお家の事情を話していらして……それで、その話を聞いたうちのハウスキーパーの一人がそちらに向かってしまったみたいでっ』
ハウスキーパー……掃除とかの家事をする人か……。広義では執事やメイドもそうだろう。
そーゆー人がたくさんいるのかぁ、すげーなーファラん家は……。
『もしこの留守録を聞いたらすぐにそこから離れてくださいっ。彼女、何か早とちりしているみたいでっ』
そこで通信が終了する。しかし昼に通信してくるなんて……ファラはちゃんと寝たのだろうか……。
そうしてまたうつらうつらしてきて、再び心地好い眠りの中に沈んでいこうとした時……。
『ジーク=フニール!』
外から近所迷惑な大声が響いてきた。普通に出せるような音量ではなく、拡声アイテムとかを使ったような大声だ。
『そのアパートにいることは分かってるんだぞ! 隠れてないで出てこい!』
うるせーっ! いきなり何なんだ⁉
アパートの他の部屋のドアが開いて、ざわざわとする気配が伝わってくる。
「何だ何だ?」
「浮気でもしたのかフニールとかいう奴は?」
などと根も葉もない声まで聞こえてくる。なんか……このまま放っておいたらヤバそうな予感が……。眠気なんかふっ飛んじまったよ。
『おいそこのお前! ジーク=フニールの部屋はどこだ⁉』
「え⁉ し、知りませんけど……⁉」
『それじゃあそっちのお前! どこだ⁉』
「さ、さあ、知らないわ?」
『くぅー! じゃあ向こうの……』
どうやら俺の部屋がどこかまでは調べがついていないらしい。いまのうちに窓から逃げよう……。
「あ、あのー」
『何だ⁉ 知ってるのか⁉』
「い、いえ、でもそういうことなら大家さんに聞くのがてっとり早いんじゃないかなーと……」
おい余計なこと言うな!
『そうか! おい大家さんはどこだ⁉』
「それならあそこの大家さんの部屋に……」
『ありがとうっ。おーい大家さーんっ』
なんかもっとヤバそうなことが起きそうな気が……。いやそんなことより早く逃げよう。大家さんまで出てきたらもう手がつけられ……。
「うるせーっ! さっきからうるせーっんだよっ!」
部屋の中まで響き渡ってくる女の怒鳴り声。ヤベエっ大家だ!




