その76 落着
「いえ、父は手加減していたわけじゃないと思います。ジークさんの実力を推し量っていたのだと」
ファラが近付いてきながら話し掛けてくる。
「それで本気を出すべき相手だと思った瞬間に、気絶させられてしまったのだと。……最初は本気じゃなかったという意味では、ジークさんの言う通りかもしれませんが」
まあ、一発のグーパンで沈めちまったからな。
「手加減じゃなくて様子見ってことか」
「言葉が違うだけで、やってることは似ていますけどね」
あの戦いの後で、ファラが冒険者として活動する為に俺に依頼してきたわけだしな。実力があればそうして、なければファラの冒険者志願は絶対に認めなかったってことだろう。
まあ、たとえおっさんが本気を出したとしても、俺は何とかしていたけどな。最悪、全速力で逃げたし。
本気のおっさんと戦ってみたい気も、なくはないが。ファラの推測が合っているかは分からんけども。
世間話のようなそんな会話をファラとしていると、探知を終えたレノが振り向いた。緊張感なく報告してくる。
「やあやあ、どうやら誰かがこっちに来るみたいだよ。二人だ」
「何?」
と、そこで木立の向こうから誰かがこちらへと駆けつけてくる。制服を着た銀行の警備員二人だった。
「何だ⁉ さっきこの辺りで大きな音がしたぞ⁉」
戦いや爆発の音を聞いて来たらしい。遅せえなと一瞬思い掛けたが、よくよく考えれば最初に戦いが始まってから、時間にしてまだそんなに経ってなかったか……。
「な、何だお前達⁉ 何でここにいる⁉」
「そこに縛られている人達は何だ⁉」
やれやれ、説明すんのが面倒だな。
「ジーク、頼むわー」
「ファラ、説明頼む」
「えっ⁉ 私ですか⁉」
「俺やレノがするより、ファラがした方が信じてもらえそうだからな」
「うんうん」
その時ファラ父が上空から着地してきた。空気弾によるクッションで、落下の衝撃は和らげたらしい。
「みんな大変だ! いまここに誰かが来るぞ! 早く離れなければ!」
もう来てるよ! んでもってタイミング悪りーんだよ! 警備員達もびっくりした顔になってやがる。
「あ、怪しい奴らめ!」
「ちょっとこっちまで来い!」
ほら、もっと面倒なことになった。
その後、ファラが事情を警備員や後から来た官憲に話し、強盗共が乗ってきた馬車や持ち物から各種の証拠品も見つかって、ようやく俺達の身の潔白は晴れた。
まあ、こんなオチがついたところで、ひとまず今回の銀行強盗の件は落着した。
……気になることは残ってはいるがな。




