その74 爆発されちゃった
奴は木に背中を預けながら、一筋の血を流す口で言葉をつぶやいた。
「……貴様……ノースキルなわけが……」
まだ言うか。俺自身残念なことに、だからスキルは持ってねーんだよ。
それより、気絶してないのは、ちとまずいな。奴の覚醒スキルでいまだに『ハート』の特性だけは分かっていない。
もしこれ以上悪あがきでもされたら厄介だ。早いとこ追い討ちして気絶させとくか……。
「…………」
と、そんなことを思っていると、奴の首ががくんと力をなくして垂れた。
お?
俺は屈み込んで奴の様子を確かめる。手に持っていた剣も幽霊のように薄くなって消えていく。どうやら本当に気絶したらしい。良かった良かった。
俺は立ち上がると収納アイテムから一本の縄を取り出して、奴の身体をぐるぐると縛っていく。スキルまで無効化出来るわけじゃねえが、やらないよりはマシだろう。
そしてファラ達三人の元へ向かおうとした時、銀行の前側の方から凄まじい轟音が響いてきた。この音は……⁉
俺はそちらへと駆け出しながら、耳の通信アイテムに指を当てる。
「おい! どうした⁉ 何があった⁉」
『お? その声はジークかい?』
答えたのはレノだった。
『いやー、奴ら悪あがきしちゃってさー、ダイナマイト爆発されちゃった』
「な……⁉」
一瞬驚いたが、すぐにレノの声に緊張感がないことに気付いた。ということは。
「……対処出来たってことだよな? お前が焦ってないってことは」
『もちのろんさ。ま、その為にファラちゃんとジークは私達に協力を頼んだんだろ』
それもそうだった。レノが言い終わると同時期に俺は銀行の前側へと到着し、いま起きた出来事の結果を目の当たりにする。
銀行の前にはロープのようなものでぐるぐる巻きにされた残りの強盗達と、地面に粉々に散らばる何かの破片、及びその周りにファラ達三人の姿があった。
ロープのようなものはレノのスキルで作った拘束具、地面に散らばるのはダイナマイトの破片だろう。
「あ、ジークさん」
弓を手に持つファラが気付いて振り返ってくる。
「こちらは片付きました。ダイナマイトに関しても、父が対処してくれたので周囲への被害はゼロです」
「……空気の塊で包んで、爆発をその内部に抑えたってことか……?」
「はい」
ファラがおっさんの方を見て、俺もそちらに顔を向ける。おっさんは腕を伸ばしてピースサインをしていた。
「わっはっはっ、私の空気弾にはこんな使い方もあったんだな! まあただ撃つよりも難しいし、突破しようと思えば突破されてしまうがね」




