その71 拳圧弾
盾による追撃。本来盾は身を守るものだが、その硬度を利用して攻撃へと転化してきやがった。
拳を防御されただけでも結構痛かったが、その盾が猛スピードで四つも直撃すればかなりのダメージは免れないだろう。
「マジかよ」
奴にとって、俺は絶対に逃がしてはいけない敵だ。もし逃がせば、さらなる増援を呼ばれて計画を頓挫させざるを得なくなる。
だがしかし、逃げるとは言ったものの、それはあくまで奴の剣戟からであり、奴自身やこの戦いから逃げるつもりはない。奴が俺を仕留めるつもりのように、俺もまた奴をここで倒す必要がある。
「だったら」
俺は後ろへと振り返ると、脚に力を込めて本格的に走り出した。目指すは眼前の太い木の幹。一歩踏み込んでジャンプするようにして、その幹に片足を着けると、自慢の脚力でもって細かな凹凸のある幹を駆け上がっていった。
「……何……⁉」
奴が目を見開く。奴の驚く顔を見たのは何気に初めてかもしれない。『神経衰弱』とかいうふざけた覚醒スキルを使ってきた意趣返しだこの野郎。
「……貴様の方こそマジかよと言いたい気分だな」
奴が吐き捨てるようにつぶやきつつ、四つの盾は幹を駆け上がる俺の背後を忠実に追跡してくる。壁走りならぬ幹上がり、だがこのままではいずれ四つの盾によって連撃を受けるのは確実だ。
「だから、この盾を破壊させてもらうぜ」
俺は脚に力を込めて、今度は木の幹を蹴るようにして空中へと躍り出る。紛うことなく俺目掛けて追尾してくる盾達へと、俺は拳を振り抜いた。
「お、らあっ!」
一度だけではなく、続けて四度。それぞれがそれぞれの盾を撃ち抜くようにして、拳を振り抜いていく。
ファラ父のおっさんは自身の『吹き飛ばし』のスキルによって、空気の塊を吹き飛ばして攻撃出来る。この技も似たようなものだ、拳を凄まじいスピードで振り抜くことによって、その拳圧で遠距離のものを攻撃する。
さながら、俺が放つ空気弾ってところか? いや拳圧だから違うか?
「……な……っ⁉」
四発の拳圧弾によって四つの盾は破壊されていき、その真下で目を見開いている奴に降り注いでいく。未知の怪物にでも遭遇したような、信じられないという顔をしていた。
「……貴様……何だそのデタラメな技は。それが貴様のスキル、いや覚醒スキルか……⁉」
無事に地上に降り立つ俺へと奴が問い質してくる。本当に驚いているのだろう、手に持つ双剣での追撃すら忘れているようだ。
「残念、外れだ。スキルでも覚醒スキルでもない、ただのパワーだよ。第一、俺はノースキルだしな」
「…………⁉」




