その70 覚醒スキル
覚醒スキル……⁉ スキルの上位、スキルを超えたスキル。こいつ、それほどの実力者だったのか……⁉
男がおもむろに手をかざし、そこに浮かんでいた二枚が反転して表になる。露わになったのは『スペードの2』。途端にその二枚のトランプが消え、代わりに二本の剣が出現した。
「……ちっ、外れか」
悪態をつきながら男が二本の剣を取る。この覚醒スキル、表示されたマークのものを実体化する能力ってことか。
つまりは、時間を掛ければ掛けるほど、実体化したものを増やせば増やすほど、奴はより強力に有利になっていくということ。
まさにトランプの神経衰弱のように、ポイントを増やせば勝ちに近付くのと同じように。
これ以上奴が強くなる前に、俺は奴へと飛び出した。二本の剣しかないいまなら、まだノースキルの俺でも倒せるはずだ。
「……無駄だ。貴様は俺には勝てない」
握った拳を奴へと振りかざした時、奴のそばに浮かんでいた二枚がまたも反転する。表示されたのは『ダイヤの4』。
奴の周囲を取り囲むように四つの小型の盾が出現して、その一つが俺の拳を防いだ。ガアン……堅い本物の金属にぶつかったように、衝撃音が鈍く反響する。
ちっ……痛ってぇ……。生身の身体を武器にするデメリット、防がれた際にも俺自身に痛みが、ダメージがフィードバックしてきやがる。
「……ちっ、また外れか」
奴がまたも悪態をつく。盾を四つも作り出しといてなにが外れだ。
「トランプのダイヤの意味は『金』だろうが。なんで盾が出来んだよ」
「……覚醒スキルだからだ」
答えになってねーんだよ。スキルが覚醒したからって何でもありなわけねーんだからな。
「……それより、話している余裕があるのか?」
「なに……?」
俺の拳を防いでいる盾が押し返してきて、地面に倒されないように俺は後ろへと跳んで退く。が、俺が着地するのとほとんど同時に奴が高速で迫ってきて両手に持つ剣で斬りかかってきた。
二刀流、いや剣だから双剣流といったほうが正しいか? 奴は二本の剣を巧みに使いこなし、まるで激流のように流れる怒涛の剣戟を放ってくる。
「くそ……っ」
対する俺は武器のない、生身で戦うスタイルだ。この剣戟を拳や脚で受け止めようものなら、いくら滅茶苦茶鍛えていたとしても触れた瞬間に俺は達磨になっちまうだろう。
生身で戦うデメリットがまた出やがったことになる。武器、特に剣などの鋭利な刃物系の武器と対峙する場合、相手の攻撃に対して基本的には避けることしか出来ないというデメリット。
これが弓矢や棍棒、ギリギリで槍であれば、刃のない柄の部分などを受け止めて防ぐことが出来るのだが……。とにかくいまは対剣戦術で戦うしかない。
つまり。
「いったん逃げさせてもらうぜ」
俺はバックステップを踏んで奴の双剣戟から逃れる……が、奴は。
「……逃がすと思うか」
一本の剣先を俺へと向けた。その動きに呼応して、奴の周囲に衛星のようにあった四つの盾が俺へと迫ってくる。




