その66 二人の返事
大事な話がある……ファラのその言葉に、ガタリッと音を立ててファラ父が立ち上がった。
「何だと⁉ 二人が結婚するから認めてくれだと⁉」
「言ってねえ!」
思わず叫んじまった。
ファラ父に続いてレノも勢いよく立ち上がって訴えるように言ってくる。
「そんな⁉ 私というものがありながら他の女と結婚するなんて⁉」
「違ーしおめーは黙ってろ!」
悪ノリしてんじゃねえ!
とか思ったらファラ父がまたも声を上げた。
「どういうことだジーク⁉ 君という奴は二股していたのか⁉ ファラという超絶可愛くて美しくて可憐でおしとやかで器量が良くて気が利いていて最高の私の愛娘がいるというのに⁉」
「うるせーし長ーんだよ形容詞が!」
この二人意外と気が合うんじゃねえか? 悪ノリして周りをおちょくって引っ掻き回すって点で。
ファラ父とレノがそんなふうに、ある意味いつも通りのマイペースなノリを発揮していたが……ファラは思いのほか冷静で、落ち着いた顔つきで二人のノリが一段落するのを待っていた。
普段のファラであれば、ファラ父の言葉に顔を紅くして恥ずかしがっていただろうし、レノの言葉にも何らかの反応を見せたに違いない。
『ええっ⁉ お二人って付き合ってたんですか⁉』
的な、そんな驚きの顔をして、それに対してレノが面白そうな笑いをする……そういう光景が広がったのだろう。
しかしいまのファラは俺の予想に反して、大人びた態度で二人を見ていて、次に自分が何を話すべきなのかを冷静に考えているようだった。
「いいから黙って大人しくファラの話を聞いてろ」
俺がそう言って二人を再び椅子に座らせると、ファラが口を開いてさっきの話の続きを再開する。今夜決行される銀行強盗に関する、俺達がいままでに知り得た情報の話だ。
「……私達がこれからお話するのは、この街に住む人々の生活と安全に関わる大事なことです。実は、先ほどジークさんと荷物運びのクエストを終わらせたのですが、その後に……」
ファラ自身、内心ではどうしようか困っているはずなのに、そんな様子は一切見せずに冷静沈着に話している。いま自分が慌ててはいけないと、話を聞いている二人に信じてもらう為に、俺を不安にさせない為にそう振る舞っているのだろう。
「…………」
「…………」
話を聞き終えた二人は押し黙っていた。やがてファラ父がレノに顔を向けてうなずき、レノが肩をすくめて応じる。
「ファラの頼みとあらば、不肖このダンディなお父さんが助けてあげるのは当たり前じゃあないか!」
「やれやれ、ジークはいつも面倒なトラブルに巻き込まれるねえ。今回のは自分から深入りしたみたいだけど、久しぶりに私も力を貸そうかねぇ」
二人の返事はつまり俺達に協力してくれるということ。




