その65 とても大事な話
ファラは緊張した面持ちをしながらも、俺へと顔を上げて言った。
「わ、私達二人だけで難しいのなら、他の方々に協力を要請するというのはどうでしょうかっ」
「……それは……、ギルドや官憲に通報するということではなく?」
「は、はいっ。ジークさんや私が信頼出来る数人の方に、私達が聞いた話を伝えて協力してもらうんです。今夜、強盗達が銀行を襲撃する前に」
「…………、例えば、誰に?」
パッと、俺の頭にはレノの顔が思い浮かんでいた。……やれやれ、なんであいつの顔が真っ先に浮かぶかね。
「……私はまだ冒険者として初日ですから、思い付く人はほとんどいません。強いて言えば、父くらいです」
あのおっさんか。確かにあのおっさんはかなり強いし、『吹き飛ばし』のスキルは何かに使えそうだな。
「ジークさんの方は、誰かいらっしゃいますか?」
俺は肩をすくめた。
「残念ながら、パッと思い浮かんだのは一人だけだな。レノ……ギルドで俺達に絡んできたあの紅髪の不良職員くらいだ」
「…………あの女性の方ですね……」
誰のことを言ったのか思い出していたのだろう、ファラの返答にはわずかな間があった。
「……レノさんもお強いんですよね」
「まあ、何度か助けられたことはあるな。もう結構前の話だが」
「…………どんなスキルをお持ちなんでしょうか?」
がらがらがらがら……俺達の横をまたも荷馬車が通り過ぎていく。それを横目で見ながら、俺はファラに提案する。
「それに関しては、レノ本人から聞いた方がいいだろ。とりあえず、レノとおっさんの二人に連絡して、この話を伝えよう」
「……分かりました。そうしましょう」
そして、俺達は一度ギルドのある街の方まで戻ることにした。
…………。
ファラのデカイ屋敷、その一室に俺とファラ、及びファラ父とギルド制服のレノがいた。
時刻は昼時、仕事をしていたファラ父とレノにとっては昼休みの時間帯だった。
「あの、ファラちゃん? お昼ご飯をご馳走してくれるのは嬉しいんだけどさー……なんでシリアスな空気?」
背もたれを前にした椅子に座りながらレノが言ってくる。背もたれに手を回して行儀の良い座り方ではないが、その顔は珍しく少し困惑している。
レノの言葉に同意するように、椅子に座るファラ父も言ってくる。せっかくの昼休みを邪魔しているというのに、不機嫌な様子を垣間見せないのは流石年の功というべきか?
「うむ、私にも説明してほしいのだがな? 愛娘のファラやそのパートナーのジークと一緒に昼食を食べられるのは嬉しいが、何やら物々しい雰囲気だったのでね。そこの美しいお嬢さんも紹介してほしいし」
「いやー、美しい? 私って美しい? ねーねー私美しいってよジークぅ?」
レノが上機嫌で言ってくる。うぜー。
二人のそんな言葉に、ファラが真面目な顔で応じる。椅子に座る二人に対して、ファラは慇懃な態度で立っていた。ちなみに俺も真面目な様子で彼女の隣に立っている……レノに対しては内心さっきみたいなことを思ったが。
「お二人をそれぞれご紹介したいのは山々ですが、その前に、いまはとても大事な話をしておく必要があります。お仕事のお昼休みに馬車を駆け付けてまで集まっていただいたのは、それが理由だからです」




