その64 私達だけでは
「…………」
「…………」
しばしの間、俺達は黙り込んでしまう。気まずいような、よそよそしいような、そんな変な空気。ファラに至っては顔を伏せて、なんかもじもじしてるし。
「「……あの……」」
何か言おうと声を掛けようとすると、偶然にも彼女と声が被ってしまう。恋愛ものの小説や漫画などでしか見たことのない光景を、まさか自分がしてしまうとは。
「あ、ジークさん、どうぞ……」
「い、いや、ファラこそ言いたいことがあったんだろ?」
「い、いえ私は後でいいので……」
「…………」
「…………」
そんな変な会話もしてしまっている。なんか、なんだこれ、調子が狂ってしまうな、本当に……。
と、その時、道の向こうから荷馬車が走ってきて、ピーピーと甲高い警笛を鳴らしてきた。人通りの少ない倉庫街とはいえ、道の真ん中に突っ立っている俺達は通行の邪魔なわけで、俺達は慌てて道の端へと移動していく。
がらがらがらがら……荷馬車が通り過ぎていく。これが良いきっかけになったのだろう、ファラが独り言のようにぼそりとつぶやいた。
「……いまのも、もしかして……?」
奇しくも、いまの荷馬車はさっきの強盗グループと同じ方向に進んでいっている。思わず関連付けてしまう気持ちも分からなくはないが……。
「早計はすんな。勝手な憶測はただの迷惑だ」
「あ、そ、そうですよね……」
ここは倉庫街だ。普通に物流の荷馬車という可能性の方が高い。それに、例え仮に本当に強盗グループの仲間だったとしても、いま取り押さえるのは難しいだろうしな。
しかし彼女のそのつぶやきは、俺にとっても良い発端になった。改めて、俺は彼女に言う。
「……さて、何か色々と話が逸れちまったが、元の話に戻すか」
「そ、そうですね」
「あの強盗グループを一網打尽にする方法だが……俺はノースキルで、ファラは『弓矢』のスキル……これで何とか出来るのか……?」
ファラに話してはいるが、どちらかというとこれは俺自身への疑問でもある。果たして俺達二人だけであの強盗共を何とか出来るのか? という。
俺が顎に手を当てて考えていると、ファラが小さく手を上げながら言ってくる。相変わらず自信のなさげな声音で。
「あ、あの……」
「ん? 何か良い考えがあるのか?」
俺が目を向けると、彼女は上目がちに言った。
「は、はっきり申し上げると、わ、私達だけではあの強盗達を捕まえるのは難しいと思います。私の『弓矢』スキルでは対処しきれませんし、ジークさんはものすごく強いですが……」
「……強いだけじゃ無理ってことだな。ダイナマイトで自爆されたら全部おしまいだ」
「……は、はい……け、決してジークさんを悪く言っているわけではないのですが……っ」
焦ったようにファラは付け足す。俺に気を遣う必要はないのだが。
「気にする必要はないぞ。ファラの言っていることは正しい」
それよりも……俺は彼女の言葉の先を促した。
「何かアイデアがあるからこそ、そういうことを言うんだろ? 教えてくれないか、ファラのそのアイデアを」




