その62 おしゃかになる危険
ここにダイナマイトが積んである……俺は被っていた毛布をそっと取ると、幌の出入口から僅かに差し込む太陽光を頼りに荷台の中を見回していく。
ファラも同じように辺りを見回していき、少ししてファラが俺の肩を指でとんとんとした。俺が顔を向けると、荷台の端の方に置かれていたいくつかの木箱を指差している。
(あれでしょうか?)
御者台の男達には聞こえないように非常に小さな声で聞いてくる。俺は物音を立てないように注意しながら、四つん這いでその木箱へと近付いていき、そっと静かに中身を確認した。
緊張した面持ちでこちらを見つめるファラに、俺は顔を向けて神妙にうなずきを返す。
(これだ)
(……っ)
御者台の方から男達の声が聞こえてきた。
「もうそろそろ合流場所に到着するぜ」
「……到着したら、順次道具を降ろしていくぞ。特にダイナマイトの取り扱いには気を付けろ。こんなところで爆発でもしたら全員お陀仏だ」
「分かってるよ。金の山を拝む前に死にたくはねえからな」
俺はファラへと手招きして、彼女もまた音を立てないように四つん這いで近寄ってくる。来たファラに俺はかすかな声で言った。
(降りるぞ。このままここにいたら見つかっちまう)
(ダイナマイトはどうします?)
(置いていく。なくなったことに奴らが気付いたら、捕まえる前に逃げちまうかもしれねえからな)
(一本だけでも、証拠として持っていくというのは?)
俺は小さく首を横に振った。
(他の奴ならいざ知らず、あの神経質そうな男はたとえ一本なくなっただけでも怪しむだろうからな。残念だが持っていくのはなしだ)
(分かりました)
それから俺達は入ってきた時と同じ幌の隙間へと四つん這いで向かい、走る馬車の荷台からまずはファラが地面に転がるように降りて、次いで俺も降り立つ。しかし走る馬車からの正確な着地はやはり難しく、地面に足を着けた後にバランスを崩して転んでしまったが。
男達には無事に気付かれずに済んだらしく、荷馬車は道の向こうへと走り去っていく。起き上がったファラがこちらへとやってきた。
「これからどうします? さっきの話をギルドに通報しますか?」
「…………」
俺も立ち上がると、顎に手を当てて考え込む。ファラの言う通りにギルドに通報するのも一つの手ではあるが……。
「いや……ギルドに通報するのは後にしよう」
「何故ですか?」
ファラの疑問はもっともだ。俺は説明する。
「いまギルドに通報すれば、確かに奴らのいた倉庫や合流場所とやらは調べられるし、ダイナマイトとかの物的証拠も見つかるだろう。まあ、直前で隠されたりする可能性もあるし、最悪その場で自爆されて全ての証拠がおしゃかになる危険だってある」
「……なら、どうするんですか?」
ならばどうするか? 俺自身の疑問でもある。
「それをいま考えてるんだが……どうすっかな……。ダイナマイトで自爆っていう手段が相手にある以上、うかつに揺さぶったり刺激するわけにはいかねえしな……」




