その61 強盗
男達が御者台に乗り込む音……それから馬の手綱を振るう音がして、ガタゴトと音を立てながら馬車が動き出した。
男達が何か喋るかもと思って聞き耳を立ててみるが、一向に喋る気配はなく双方無言のままだ。もしかして実は仲の悪い二人とかじゃないだろうな? これじゃあ情報が得られな……。
(……じ、ジークさん……っ)
そんなことを思っていると、すぐそばにいるファラが微かな声を漏らした。男達に聞こえないように、いままでよりもさらに小さな声、蚊の鳴くよりも脆弱な声だ。
(……あ、あの、その……っ)
(……どうした? 何かトラブルでもあったか?)
俺もまた外に聞こえないように細心の注意を払って、囁くような声で尋ねる。体温が感じられるほどに間近にいるファラだが、その温もりがさらに増したような気がした。
(……い、いえ、やっぱり何でもないです……)
(……大丈夫か? もし何かしら気になることがあったらすぐに言えよ。俺達が尾けていることがバレたらヤベエからな)
(……だ、大丈夫です、何でもありません……っ)
(……ならいいが……)
ファラの態度はどこか、しどろもどろになっていて、さっきまでの大胆で肝が据わっていた彼女とは別人のようだった。だがしかし、ファラ自身が大丈夫と言っている以上、いまはその通りにしておいた方がいいだろう。
その時、御者台の方から声が聞こえてきた。中年男の声だ。
「向こうに着くまでの間に、計画の確認でもしとくか? 何か問題点に気付くかもしんねえし」
「……通行人に聞かれたらどうする」
「大丈夫だって。通り過ぎる馬車の会話なんて聞こえねえし、そもそもここから目的地までは人気が少ない道を通るからな」
「……確かに、いまは誰も見当たらないがな」
「だろ。ってことで確認するぜ。俺達が狙うのはこの街でも一番の銀行、そこに預けられている金品をあらかた奪い取る」
「……実行は今日の夜中。届けられた収納のリングが故障していないことを入念に確かめてから」
ある程度予想は出来ていたが……やはりそういうことか。
収納の指輪は確かに生物をしまうことは出来ないように設定されている。それは拉致や監禁、誘拐といった犯罪を防止する為だ。
だが、裏を返せば生物以外の『物』であれば収納出来るということ。奴らが言ったように、強盗には使用可能だということだ。
無論、法律的にはそのような使用方法は禁止されてはいるが。
「侵入には爆弾、ま、ダイナマイトだわな、それを使って大穴を開けて中に入る。セキュリティが作動するだろうが、そこは上手いことやって大金をせしめていく」
「……肝心な部分を曖昧にするな。合流場所に到着したら、完璧に覚えるまでシミュレートする。いいな」
「へいへい、分かりましたよ」
「……それと一応言っておくが、ダイナマイトを使うのはあくまでそれを使わざるを得ない状況でだ。爆発の音と衝撃のリスクを考慮するならば、可能な限り静かに完了させたい」
「へいへいそれも分かってますよ。ま、ダイナマイトは後ろの荷台に積んでるから、合流地点に着いたら降ろしていくぜ」
「……そうだな」




