その57 ……やりましょう、ジークさん
「というわけで、俺はこれからあの倉庫に戻るつもりだが……ファラはどうする? いま引き返せば、たとえ何かあったとしてもファラは無関係ってことでお咎めなしでいられる。だが……」
「…………」
俺はファラに尋ねた。あるいはそれは彼女のことを試すようにも聞こえたかもしれない。この件に関して、俺とは無関係を装うか、それとも行動を共にするか。
一時的な沈黙。二秒か三秒か、体感的にはもっと長くも感じられる時間。そしてファラは口を開いた。
「……私の返答を言う前に、一つ聞かせてください。どうしてそのことを私に話したんですか? 話さなければ、私がギルドに報告するかもしれないという危惧もなく、独自に素早く調査出来た筈なのに」
なんだ、そんなことか。俺は肩をすくめた。
「確かにファラの言う通りかもな。だが、俺はこう見えて義理堅い人間なんでね」
「…………」
なんかいま、『こう見えて……?』みたいな視線を感じたが、気にしないでおこう。
「だから、ファラには話しておかねえとな、って思ったんだよ。だってファラはいま俺の仲間で、クエストをするパートナーなんだからな」
「……っ」
ファラの目がわずかに見開かれる。俺の言葉が予想外で、こんなことを言うとは思ってなかったんだろう。まあ、俺の性格を考えればそりゃそうか。
「つーわけで、ファラに話したわけだ。確かにファラに黙って調べることも出来たが、後々で何かあった時に文句とか言われたくないしな」
「…………」
ファラは無言のまま俺を見つめ続けている。ファラは真面目な性格だし、いまは生真面目な顔つきをしているし、もしかしたら、でなくとも普通に引き止めるだろうな。そんなことをしてはいけません、って。
そう俺が思っていると、しかしファラが口にした言葉は。
「……やりましょう、ジークさん」
予想外の言葉に俺は目を丸くしてしまう。思わず尋ねていた。
「いいのか? だってこれは……」
「はい。規約違反だってことは重々承知しています。ですが、私はジークさんの直感を信じたいと思います。きっと、あの届け先の倉庫には何かがあるのだと思うんです」
「…………」
正直、意外だった。
「率直なことを言えば、私も少し怪しいなとは思ってはいたんです。けれど私はクエストが初めてですし、ジークさんも普通にしていたので、もしかしてこれが冒険者としては普通のことなのかも、と……」
「……ファラも思ってたのか……」
「はい。だから、ジークさんの話を聞いた時、内心やっぱりそうなんだって思いました」
「…………」




