その56 ジークさんは私の……
ファラは黙り込んだまま俺を見つめてくる。真面目な顔つきであり、何を考えているのかは……断定しがたい。
……この人は何を言っているのだろうか、とか……本気でそう思っているのだろうか、とか。そんなふうに考えられていても仕方がないかもしれない。
少なくとも、そんなすぐに信じたり真に受けたりは出来ない言葉だろうから。
「……正直に言うと、私にはジークさんが仰っていることが正しいのか間違っているのか、分かりません……」
ややあって、真剣で真面目な口調でファラは口を開く。そこには俺の言葉を笑い飛ばしたり無下にするような雰囲気はなく、真摯に受け止めている姿勢が見えた。
「ですが……私はジークさんを信じたいです……っ。だって、ジークさんは私の……」
何かを言いかけて、そこでファラは不意に固まってしまう。
「私の……?」
何だ? 疑問の声を漏らす俺に、ファラはそれまでの真面目な雰囲気を取り崩して慌てふためくように言う。
「い、いえ、やっぱり何でもありません……っ」
「はあ……?」
いったい何なんだろうか? 気にはなるが、ファラが何でもないと言うなら、まあいいか。
ファラは気を取り直したように聞いてくる。
「ですがジークさん、それならどうするんですか? いくらジークさんが怪しいと仰っても、何の根拠もなく相手を問い詰めたりギルドに訴えても……」
「ああ、取り合ってもらえないだろうな」
あるいは、レノなら半信半疑ながらも協力してくれるかもしれないが……。いや、やっぱりどうだろうか? あいつのことだから面倒事に巻き込まれたくないとかでやっぱり断るかもしれん。
「ならいったい……?」
これからどうするのか? そう問うてくるファラに俺は言う。おそらく反対されるかもだが、覚悟の上だ。
「俺が独自に調査する。っつっても、あの届け先の倉庫に忍び込んで、こっそり中の様子を探ってくるわけだが」
「……っ……⁉」
「それで何かしら犯罪を企てているかもしれない証拠でも見つかれば万々歳だ。もし何もなければそれで良しだしな。まあ、その前に俺が見つかったらやばいことになるかもしれないが」
「そ、そんなの……っ⁉」
やはりファラなら止めに来るわな。彼女の声を制するように、俺は続けて言う。
「ああ、間違いなくギルドの規約違反だ。もしギルドに知られれば、良くて罰則、悪けりゃ今後ギルドのクエストは受けられなくなる。出禁とか永久追放ってやつだな」
ギルドまで出禁にされるかもとか、こうなりゃ出禁リストでも作って色んな所をコンプしていくか? まあ冗談は置いといて。




