その52 運搬クエストにしては
「あの、どうかしたんですか、ジークさん?」
少し考える素振りをした俺に、ファラが若干心配そうに聞いてくる。自分でも気付かないうちに、俺は神妙な顔をしていたらしい。
俺は首を横に振った。
「いや、何でもない、ただの気のせいだ」
「はあ……」
まあ、こういうこともあるっちゃあるからな。別に言うことでもないし、クエストの発注者が忘れていただけということもあり得る。
俺の考えをよそに、おっさんが嬉しそうな笑い声を上げた。
「がっはっはっ、それにしてもラッキーだぜ。アイテムを仲介するだけで、たんまりと貰えるんだからな。今後も取引したい大口のお客様だぜ!」
「……そんなに貰えるのか?」
「おっと……」
おっさんが自分の口に手を持っていく。しかし思い直したのか、すぐに肩をすくめてみせた。
「ま、これに関しては話すなって言われてねえしな。アイテムや依頼主の詳細は話せねえが」
「……ふーん……」
「つーか、二人もたんまり貰えるんじゃねえのか? 流石にそこでケチるような依頼主じゃあねえと思うが」
俺とファラは一度顔を見合わせた。俺も肩を一度すくめる。
「まあ、確かに運搬クエストにしては結構な額だったが」
「そうだったんですか?」
「まあな。ファラは相場がまだ分からないだろうが。俺としては個数が少なくて小さいし、高価なアイテムだと思ったんだが……そうじゃないのか?」
言葉尻の問いはおっさんに向けたものだ。しかしおっさんは首を横に振った。
「ノーコメントだ。秘匿だって言っただろ」
その時店内の方から店長と呼ぶ声がした。いま俺達がいるのは店の裏口だが、店員が呼んだらしい、おっさんが、
「おう!」
と返事をした後に俺達に言う。
「とにかく分かったんなら早く行け。届け先はクエストの詳細に書かれてある場所だから」
しっしっとまるで蝿でも追い払う仕草もついでにしてきやがる。
「ひっでーな。俺はともかくファラも雑にするなんてよ」
「おめーだけにしてるんだよ。俺が可愛いファラちゃんを雑に扱うわけねーだろ」
「きも」
セクハラで訴えられねーかなこのおっさん。俺はさっさと小箱を受け取って、きめーおっさんに背を向けつつファラに言う。
「行くぞファラ、はぐれんなよ」
「は、はい……っ」
こうしてファラにとっては初めてとなるクエストが始まった。
そしてすぐに終わった。道中何事もなく、道に迷うことも強盗に襲われることもなく、無事に届け先の住所へと到着したのだ。
まあ、まだ到着しただけで荷物は渡していないから、厳密には終わっていないか。とはいえもう終わるのは時間の問題だけども。




