その50 セクハラ紛い
レノがニンマリと聞いてくる。
「んで、ジークぅ? この子とはどこまでやったんだい? A? B? C? それともSまでやった?」
レノが示した単語に、ファラの頭から煙が上がっていた。口からも、
「A……B……C……S……S⁉」
などと壊れたようなつぶやきと驚き声が聞こえてくる。俺はファラに注意した。
「ファラ、引っ掛かるな。これはこいつの悪い癖というか、からかいなんだ。うぶそうな奴を見ると、こいつはこういう冗談を言うんだ」
「冗談……?」
「ああ。AはAttack、攻撃のことでBはBlock、防御のこと。でCはCounter、反撃のことだな。これらは模擬戦や訓練を示しているのさ」
「あ……ああっ、なるほど!」
「まったく、紛らわしい。わざとやってるのが見え見えだ」
「あれ……でもSは……?」
レノがニヤリとした。
「気になるかい? そうさファラちゃんとやら、Sは君の思っている通り、セッ……」
「セッ……⁉」
俺は口を挟んだ。この悪ふざけの茶番をさっさと終わらせる為に。
「セッション、だろ」
「なんだ、感付いていたのかー」
「お前の考えそうなことだ」
呆れる俺と、なははと自分の後頭部に手を当てて笑うレノ。ただ一人ファラだけが意味が分からずポカーンとしていた。
「あの……どういうことなんですか……?」
「セッションのことは知ってるだろ? 音楽家が即興でやる演奏のこと」
「ええ……」
「これに関してはこいつが勝手に言ってることだが、つまり冒険者同士の即興の協力関係のことをセッションって言ってんのさ、こいつは。魔物を討伐する時とか、未知のダンジョンを踏破する時とか」
「な、なるほど……」
納得するファラに、レノは口元に手を当ててニンマリとしながら悪ふざけを続けやがる。
「あれあれー、ファラちゃんとやらー、いったい何を想像してたのかなー?」
「……っっっっ……」
「もしかしてセッから始まる別のことでも考えてたのかなー? って痛い! やめてジーク! ゴリラみたいな馬鹿力で顔面を掴まないで!」
誰がゴリラだ! レノの顔面を掴みながら俺はファラに言う。
「ファラ、こいつはレノだ。俺と以前パーティーを組んでいた奴でな、ふざけているが実力は確かだ」
「は、はあ……」
レノもまた声を上げる。
「誉めるか貶すかどっちかに……ぎゃあっ⁉」
ギリギリとレノの顔面を握力で締め付けていると、レノが悲鳴のような声を出した。
「わ、悪かったジーク! 謝るからこの手を離してくれぇ!」
「謝るなら俺じゃなくてファラにだろ?」
「そ、そうだった! ごめんファラちゃん! もうあんなセクハラ紛いのことはしないから許してぇ!」
俺はファラを見る。一応の確認だが、彼女は焦った様子でコクコクと首を縦に振っていた。早く離してあげてくださいと言っているようなので、俺はレノを離してやった。




