その49 お持ち帰りしたいくらいだ!
なんか知らんが意気込むファラについていく感じで、俺はギルドへと到着する。いつも通りの入口ドア。ファラが緊張ぎみに見てくる中、俺はいつも通りにそのドアを開けて中に入った。
ギルドは飲食店や小売店とは違い、勤めている職員から『いらっしゃいませー』と言われることはない。まあ中には言ってくる奴もいるにはいるが。
どちらかというとギルドは仕事紹介所や役所に近く、内部は整然と落ち着いた雰囲気であることが多い。無論、時には荒くれた冒険者が騒ぐこともあるにはあるが、大抵はみんなプロの冒険者らしく落ち着いていて、室内にある談話スペースで談笑していたり記事を読んでいたりする。
「……わあ……」
だから、いまのファラみたいにあちこちキョロキョロしていると、すぐに初心者だってことがバレちまう。それ自体は恥ずかしいことでは……まあ、なるべくならやめてほしいが……。
「……キョロキョロするな。初心者だってことがバレバレだ……」
「……あ、そうですよね……」
小声で注意すると、ファラも恥ずかしそうに居住まいを正して前を向いた。俺は息を一つつきながら。
「……ここに来る冒険者の中には、当然素行が悪い連中もいる。時には善人ぶって近付いてくる奴もな。気を付けねえと、そいつらの餌になるだけだぜ……」
「……っ……⁉」
「……まあ、慣れるまでは俺がついているがな。とにかく気を付けろ」
「は、はい……っ」
小声でそんな会話をしていると、不意に向こうの方から大きめの声が掛けられた。人目を憚るという概念を丸めて投げ捨てたような声だ。
「おー! ジークじゃーん! 昨日ぶりー!」
紅髪ポニテのギルド職員、レノだ。げえっ。
「おいおいー、何だよそのドブネズミに出くわしたような顔はー。傷付いちゃうぜー」
「……お前……せめて声を小さく出来ねえのか……普通くらいには……」
今日はファラもいるから、恥ずかしさも一段ときつい。他の冒険者やギルド職員の視線が痛いし、中にはクスクスと笑いを漏らしている奴もいる。
「あ、あの、ジークさん、この方は……?」
ファラも戸惑った様子だ。そんな彼女にレノが気付いて、大袈裟に両手を広げた。
「わあお。この子が昨日言ってた新しいパートナーかいジーク。中々に可愛い子じゃないか!」
「…………っ」
レノの言葉にファラが照れたようにもじもじとする。あまりにも初々しい反応だったからか、無駄にレノのテンションが上がりやがった。
「わあっ、反応も可愛い! もう今日は仕事をやめにして、この子をお持ち帰りしたいくらいだ!」
「やめろ。仕事をしろ。そんで俺達に構うな」




