その47 どんなクエストを
ファラと会話をしていたら、女店員が口を挟んできた。彼女はファラと話している時は和やかだったのに、いまは満面の不機嫌だった。
「『待たせて悪かった』、とは言わないんですね?」
重箱の隅をつつくような声音。なんか露骨過ぎないか? ま、いいけどよ。
「デートでも恋人でもないですからね。良く言えばパーティー仲間、悪く言えばビジネスパートナーです。必要以上に気を遣うつもりはありません。それに待ち合わせ時間には余裕で間に合ってますし」
「……私、正論で殴ってくる人、好きじゃないんですよね」
「そうですか」
個人の主義主張に文句を言うつもりはない。しかし彼女は俺の素っ気ない塩対応にむっとしたようだ。
「いつか不意討ちされますよ。主に女性から」
なんで女?
「その時は返り討ちにしますよ。フィジカルには自信がありますから」
「へぇー、女性にも手を上げるんですか?」
「襲ってきた時点で敵ですから。敵に女も男もありません、やらなきゃ殺られます。まだ死にたくはありませんから」
「へぇー、なるほどぉー、確かにそうですよねぇー」
顔は笑っているが、女店員の額にはビキリと青筋が一つ浮かんでいた。漫画でよく見るあのバッテンみたいなやつだ。
相当ムカついているらしい。早いとこ切り上げていなくなったほうが良さそうだ。本当に襲撃されそうだから。
俺は、俺と店員のやり取りにおろおろと狼狽えた様子のファラに言う。
「行くぞファラ。ギルドが混む前にクエストを受けたいからな」
「あ、はい……っ」
ジト目を向けてくる店員に背を向けて俺は歩き出し、ファラが後ろからついてくる。
「……ふん……っ」
不満そうな店員の声がして、背後でカフェのドアが閉まる音がした。店内に戻っていったらしい。
ファラは店員のことを気にしていたらしいが、それでも気を取り直した様子で俺に聞いてくる。
「あの、ジークさん、今日はどんなクエストを受けるんですか……?」
ファラにとっては初めてのクエストということになる。難易度の高いものを選んでも上手くいかない可能性があるだろう。
「まずはランクが低くて簡単なクエストからやっていく。それで経験を積んでから、徐々に高ランクのクエストを受けていくことにする」
「な、なるほど、分かりました」
「まあ俺のランクはBプラスだから、高くてもそれくらいまでしか受けられないけどな」
「な、なるほど……」
もしかしたらファラはそれ以上、Aランク以上のクエストも受けたいと思っているかもしれないが、いまは我慢してもらうしかない。それはファラ自身のランクが上がってからになるな。




