その40 Bプラス止まり
ファラの顔に緊張が走り、喉をごくりと動かした。俺はナイフの肉片を口に入れながら言う。
「お前が狙われた時に、俺がいつでもすぐに駆けつけて守れるとは限らない。いや約束した以上は守るつもりだが、わざわざ危険な状態にさせるわけにはいかない」
「…………」
「それにあれは初見殺しに近い特技だ。もし俺みたいに脱出されたら、もう同じ奴には二度と通用しないと思っていい。そいつに逃げられて仲間に情報共有されれば、なおさらな」
シュワシュワと泡を立てている、グラスに入った炭酸ジュースを喉に流し込んでから。
「そもそもの話、ファラ自身がまだまだ弱すぎて、あの技を使いこなせていないと俺は判断した。あれを使うのは、ファラのスキルレベルや冒険者ランクがもっと上がってから……そうだな、スキルレベル100とかSプラスランクくらいに上がってからだな」
実際はもっと低くてもいいかもしれないが、ここは敢えて高めに言っておく。そうした方が鍛練やレベル上げに身が入るかもしれないからだ。
ファラは身体の前で小さく手を上げた。
「あの、質問があるのですが……?」
「何だ?」
「レベルやランクが上がったら、どうして使ってもいいんですか? 特技の性質やデメリットは変わらないと思いますけど……?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「え……?」
俺は手近の皿にあったクロワッサンを頬張りながら。
「スキルはレベルが上がれば、それぞれの特技の強さや性質が強化されたり変化したりすることがあるんだ。冒険者やギルドの間では『覚醒』だとか『上限解放』だとか言われたりしてる現象だ」
「覚醒、ですか……?」
「Sランク以上は全員覚醒している。というか覚醒することがSランクに上がる為に必要なことだがな。とにかく冒険者をする以上は鍛練を続けていくことだ」
俺だって筋トレしてるし。
「……ちなみに、なんですけど……」
「何だ?」
フォークにパスタを巻き付けている俺にファラが聞いてくる。
「ジークさんのランクはいくつなんですか? やっぱりAランク以上はあったり……」
「残念ながらBプラス止まりだ」
「え……、えぇぇ……⁉」
ファラは本当にびっくりしたようだった。俺へと身体を向けながら。
「冗談ですよね……⁉ だって私の父や、それに彼だって倒したのに……⁉」
ファラの父親は確か昔はAマイナスランクだったとか言ってたな。で、元婚約者はまがいなりにもAランクだったか。
俺はパスタを頬張りながら。
「俺にはスキルがないからな。そのせい……かはランクを決める奴に聞かないと分からないが、まあ多少は減点対象にはなってるんだろう。いままでもギルドの公式クエストで、ソロでAマイナスランク以上の魔物討伐を任されたことはねーし」
「…………っ」
ファラは驚きっぱなしだった。




