その35 いまの実力を
……やれやれ……こんなんじゃ先が思いやられる。まずは戦いに慣れてもらわないといけない。俺はファラに言った。
「ファラ」
「は、はい、何でしょうか……っ⁉」
そこまでビビらなくてもいいが。
「とりあえず俺に攻撃してこい。方法は何でもいい。二、三分くらい、俺は反撃せずにいてやるから」
「え……でも……」
「いいから。これは勝ち負けを決めるわけじゃなくて、ファラのいまの実力を確かめる為の試合なんだからな」
「そ、そうでしたね……それじゃあ、失礼します……」
「おう。どーんと、俺の胸を借りるつもりで来い」
「わ、分かりました」
俺達の会話を聞いたおっさんが大声で言っていた。
「おおっと⁉ ジークはファラに一方的に攻撃させるようだぞ! これはあれだな、舐めプというやつだな!」
解説のつもりかもしれないが……余計なお世話だ。つーか舐めプじゃねーし。
ファラ母も優雅な口振りで言う。
「貴方、舐めプではないと思いますよ。これはそう、あれです、あの方は女性に攻められるのがお好きなお方なのでしょう」
「なるほど! ジークは変態だったのか!」
思わず俺は二人に大声で否定していた。
「誰が変態だ!」
なんか頭痛くなってきた。ここじゃなくて、街の外の草原とかで練習試合やれば良かったかもしれん。
二人の発言にファラも恥ずかしそうにしていた。耳なんか真っ赤にしてるし。
「……なんかすみません……無遠慮な父と母で……」
全くだ。ファラは悪くないんだがな。仕方ないなという感じに俺は息を一つついて、ファラに言う。
「お前が謝る必要はない。いいからさっさと攻撃してこい」
「は、はい……!」
ファラ母とおっさんも口々に言っていた。
「まあ、『お前』ですってよ、貴方。まるで貴方みたいね」
「わっはっはっ、まるでもう付き合っているかのようだな。既成事実がどんどん出来ていくぞジーク」
無視だ無視。
「もうお父さんってば⁉」
ファラは恥ずかしすぎてもう頬を朱に染めていた。くそっ、全然戦いが始まらねえ!
「ファラ! 無視しろ! いまはこの戦いに集中しやがれ!」
「……! は、はい……!」
俺の叱咤に、ファラはようやく意気を取り戻したようだ。空間に穴を空けて弓矢を取り出すと、それを構えて俺へと放った。
矢はまっすぐに、俺の右腕へと狙いを定めて突き進んでくる。が、俺はそれを右手で難なく掴み取った。
「……っ⁉」
驚くファラに言う。
「俺が大怪我したり死なないようにする為に手加減したみたいだが、余計なお世話だ。実戦では相手のことを気遣ってる余裕はないぞ!」
「……っ!」




