その34 練習試合
「必要なものを買い揃えたあとだが、早速午後のクエストに繰り出したいところだが……」
「が、がんばりま……」
「それは明日に回すことにする」
「へ……」
両拳を胸の前に出して頑張るポーズをしていたファラだったが、肩透かしを喰らったような呆気に取られた顔になった。
そんな彼女に俺は言う。
「俺はまだファラがどれだけ戦えるか分からないからな。まずはそれを確かめる。練習試合だ」
「れ、練習試合……ジークさんとですか……?」
「ああ。遠慮なくやりまくっていいぞ」
「うう……父を倒したジークさんと戦うなんて……でも一所懸命頑張ります……っ」
不安半分、頑張り半分といった様子でファラは頑張るポーズをした。
そして午後三時半くらい。場所はファラの家の広大な敷地内。流石に練習試合とはいえ一般市民がいる街中で戦うのは駄目ということで、ファラの両親の許可も取った上でこの敷地を貸してもらうことにしたのだった。
池や木立がある広い庭? に向かい合って立つ俺とファラに、離れた場所で何故か観戦することになったファラ父とファラ母、あとチーターみたいにデカイ猫。ファラ父が笑い声を上げながら言ってくる。
「わっはっはっ、練習試合か、はてさてファラはジークに勝てるかな?」
「お、お父さん……っ」
「我が家の敷地内なら滅茶苦茶広いから、誰にも迷惑は掛けんだろう。さあ二人とも、思う存分戦うがいい!」
ファラ母がおっさんに言う。
「貴方、どうせならどっちが勝つか予想しませんか? 当たった方が、外れた方のディナーのおかずを貰えるということで」
「わっはっはっ、ギャンブルは駄目だぞ、お前」
「違いますよ。相手と合意の上で予想し合って、結果に見合った報酬と罰を与えるだけです」
「わっはっはっ、人はそれをギャンブルという」
「おほほほ、そうでしたか?」
大声で笑うおっさんと上品そうに笑うファラ母。なんだろう、ファラ母は美人で気立ても良さそうに見えるが、なんだか油断のならない人な気がすると俺の直感がいっていた。
おっさんが片手を高々と上げて。
「それでは練習試合を始める。よおーい、始めえっ!」
その手を振り下ろした。試合開始の合図だ。
しかしファラは遠慮しているのか、試合が始まったというのに攻めてくる気配を見せない。未だにどうしようかと迷っている様子だった。
つい昨日まで貴族のお嬢様として過ごしてきたのだから、まあ当たり前かもしれないが。冒険者としてはまだまだ全然だな、不安しかない。




