その33 しっかりしないと
俺とおっさんは覇気を抜かれたようにしょんぼりとして、ようやくおかみさんの手から解放された。
おっさんが大人しくなった声で言ってきた。
「……はい、それじゃあファラちゃん、こちらのガラスケースに入った指輪をどうぞ……」
「あ……はい……」
ファラがケースの中の指輪を手にとって、代金を払う。それから俺とファラはその店を出て、次の店に行くことにした……のだが。
「あの……ジークさん、元気出してください」
依然、肩を落として歩いている俺にファラが声を掛けてくる。その彼女は背負っていた弓矢を既に異空間にしまっていて身軽になっていたが。
「……マジかー、この街出禁になったらどーすんだよ……」
俺は逆に物凄い疲れて肩に最悪の凝りがあるような気分だった。店の出禁だけでも落ち込むのに、街の出禁とか嫌すぎる……。
そんな俺の気を紛らわそうと思ったのか、ファラはなおも言ってくる。
「そ、それにしてもあの奥さん凄かったですねっ。二人をすぐに大人しくさせちゃうなんて、とても格好良かったですよねっ」
「……ずーん……」
俺の肩の荷と、どんよりとした気持ちがさらに重くなる。気が紛れるどころかもっと酷くなった俺に気付いて、ファラもしまったと思ったようだった。
「す、すいませんっ」
「……いや、ファラは悪くない……悪いのは俺だからさ……」
それくらいのことは自分でも分かっている。おかみさんの言っていることが正しいことも。俺は俺のこの喧嘩っ早い性格を直すべきかもな。
「…………」
そんな俺に、ファラが心配そうな顔を向けてくる。こいつは今日が冒険者の初日であり、まだ何をすればいいのか、右も左も分からないような状態だ。
だから、俺がしっかりしないといけない。もっと、これまで以上に。彼女を絶対に守ると約束したのだから。
パチンッ。俺は自分の両手で自分の両頬を叩いた。
「っ⁉ ジークさん……⁉」
びっくりした様子のファラに、俺は顔を向ける。おそらくその両頬は赤くなっているのだろう。
「悪い。ファラには心配掛けたが、もう大丈夫だ」
「そ、そうですか……」
戸惑いが抜けきれていない彼女に、俺は続けて言った。
「お前のことを守ると言った俺がしっかりしないと駄目だよな。これからは無闇に喧嘩腰になったり挑発するようなことは控える。ファラにも迷惑掛けちまうからな」
「……、ジークさん……」
つぶやくファラに、俺はこれからすることを言った。
「いまが午後二時ちょい前だからな、あと一時間くらいで、とりあえず必要なものを買い揃えていくぞ」
「は、はい……っ」
気を取り直した俺を見て、ファラもまた内心安堵したようだった。




