その31 便利なもの
ファラがびっくりした声を出した。
「わっ、なんか出ましたよ⁉」
その反応に満足した笑いを浮かべながらおっさんが答える。
「がっはっはっ、びっくりしただろう。これは空間そのものに穴を開けて、そこに物をしまえるアイテムなんだ」
「空間に……?」
「ああ。他の収納アイテムも異空間に繋がっているのは同じだが、他のは許容量が少なかったり、あるいはしまえる大きさに限界があったりするんだが」
おっさんは指輪に意識を集中させて、空間に空いていた穴の入口を広げる。
「この指輪型の収納アイテムは、こんなふうに入口を広げられるんだ。家とか店とかいう余程のでかすぎるものじゃない限りは、武器でも防具でもしまっておけるんだぜ」
「はえー、すごいんですね収納アイテムって……」
ファラは心底感心したようだった。おっさんの説明に付け足すように俺は言う。
「ただし、生物は入れることが出来ないようになっているけどな。生きた人間とかを入れて、監禁とか出来ないようにする為に」
「な、なるほど。確かにこの中に入れられたら怖いですもんね」
「ま、犯罪防止の為だな。だが便利なことに変わりはない。ファラは金はあるんだから、性能が良いものを買っておいた方がいい」
「…………」
ファラは何故か俺を見つめた。それから口を開いて。
「あ、あの、ちなみにジークさんはどんな収納アイテムを……?」
「俺か? 俺はこの小型のウエストポーチ型のだ」
羽織っていた上着をめくって、俺は腰の横側に取り付けたそれを見せる。昔から使っているものだからか、もう相当年季が入って薄汚れていたが。
「ダサいとか言うなよ。俺は武器を使わないし、その為の素材集めとかもあまりしないから、これで充分なんだ」
「……この指輪型の収納アイテムは使わないんですか」
「それはかなり高いからな。おっさんも値引きしてくんねえし」
おっさんが、
「誰がてめえに割安で売るかよ。あ、ファラちゃんは可愛いから一割引きくらいならいいぜ」
とか言ってくる。さっきからファラに対してだけ気持ち悪くなるな、このハゲ。
俺の返答を聞いたファラはというと、
「…………」
と何故か迷っているような素振りというか、表情を見せた。そんな彼女に俺は言う。
「いま言ったように、俺はこれで充分だからこれにしてるだけだ。一部のAランク以上やSランクの奴は、その指輪型のを常備してる。複数の武器を入れられて便利だからな」
武器などの装備品をしまえるというのは、思っている以上に便利なものだ。重いものを持ち歩かずに済む為、長旅で疲れが少ないし、非常時でも機敏な動きが出来る。何より両手が使える。
また自分の武器が実際に戦うまで露見されない為、敵対者に予め対策されてしまう可能性を下げられるのも利点だ。
あとついでに、複数種類の武器を、その場の状況に応じて使い分けられるというメリットもあったりする。まあその分、それぞれの武器の熟練度を上げておく必要はあるが。




