その30 収納アイテム
おっさんがファラに言う。
「ファラさん、こいつの言うことは真に受けちゃ駄目だぜ。面倒事があればまず逃げることを考える奴だからな」
「は、はあ……」
「だいたいこいつ自身が俺の店に来てることが、そもそも言ってることと違うからな。なら来んなよって話なのによ」
「…………」
ファラが俺を見る。こっち見んな。
俺は床に落ちている小袋を拾い上げる。
「だいたい何だこれ?」
「薬草の詰め合わせだよ。いいからさっさと返せ」
「てめーが投げてきたんだろうが!」
俺はおっさんに投げ返した。……が、おっさんはパシッと軽く受け止めた。
「はっ。こんなののどこが痛いのかね。全然痛くねえじゃねえか」
「うっせーよ。手加減して投げたのが分かんねーのか? 俺が本気出したらそのハゲ頭を焼け野原にしてやるぜ」
「ハゲじゃねえよ! これは剃ってんだ!」
「髪がねえことは同じじゃねーか」
「全然違え!」
その時、後ろにいたファラがおずおずと言ってきた。
「お話中恐縮なのですが、ジークさん、そろそろここで買い揃えるというものを買ってはどうかと……」
「ああ……そういやそうだったな。むさいおっさんの相手も疲れたし、さっさと買っていくか」
俺の言葉に、
「相手するのに疲れたのは俺の方だぜ、全く」
とおっさんがぼやいた。
そうして俺とファラはアイテムを見繕っていく。とはいうものの、ファラは何が良いのか分からないので、選ぶのは主に俺だったが。
「とりあえず収納アイテムは買っておけ」
「魔物を倒した時とかの素材を入れる為ですね」
「それもあるが、武器もしまっておけた方がいいからだ」
小袋型やポーチ型、バックパック型などの収納アイテムを見ていきながら、俺達はそんな会話をする。
「武器も、ですか? でもここにあるものだと武器まではしまえないと思いますけど……」
「確かにこれらのアイテムはそうだな。でももうちょい先にもっと良いのがあるんだ。値は張るがな」
収納アイテムが陳列されている場所を少し進み、いま俺が言った、より高性能の収納アイテムの前へと来る。それはガラスケースに入れられたいくつもの指輪だった。
「これって……収納アイテムなんですか?」
「見えないだろ。だがれっきとした収納アイテムの一種だ」
俺はおっさんの方へと顔を向ける。
「おっさん。ファラの為に実演してみてくれねえか」
「お前に言われるのは癪だが、可愛こちゃんの為だ。仕方ねえ」
一言も二言も余計なんだよ。
おっさんは俺達の近くまで来ると、ショーケースを開けて中にあった指輪の一つを手に取った。それをファラに見せながら。
「ファラちゃん、よーく見てな。ほらよ」
声を出すとともに、おっさんのそばの空間に白い穴みたいなものが出現する。




