その28 慣れてきたらで
話題を変えるように俺は言う。
「で、ファラはそういう記録アイテム持ってんのか? おっさんが冒険者だったんだから、色々と用意してもらったんだろう?」
「あ、いえ、父が言うには、そういうものは冒険をしながら自分が本当に必要だと思ったものを自分で手に入れていけ、と」
「……ただの親馬鹿おっさんじゃなかったんだな」
「だからまだほとんど何も準備していないようなもので……一応最低限の装備はしてきたんですけど……」
俺はファラの全身を改めて見る。弓使いが着るような軽装の上着にスカート、背中には矢筒と小振りの弓。弓矢のスキルを持っているとか言ってたから、それを活かせる武器というわけだ。
まじまじと見られることに慣れていないのか、ファラはもじもじとしていた。またそうやって俺が彼女を見ていると、ウエイトレスが再び文句を言ってくる。
「やーですねー、そんなに上から下まで舐め回すように見るなんてー。エロジジイですかー?」
「どうしてそうなるんですか⁉ 装備を確認していただけでしょ!」
「どーですかねー? ファラさん可愛いしスタイルも良いしー。ファラさんも気を付けなくちゃ駄目ですよー、男はみんな狼だって本に書いてありましたからー」
「極論でしょ! 草食系の男とか色々いますよ!」
「どーだかー。少なくとも貴方は要注意人物ですけどねー」
「どんだけ信用ないんだよ俺⁉」
俺達の会話に、ファラはずっと照れたようにもじもじし続けていた。
俺は急いで注文していた品を胃に入れると、立ち上がりながら言う。
「そんじゃ行くか」
「あ、冒険ですねっ。き、緊張しますっ。けど、私頑張りま……」
「いいや。まずはアイテムショップだ」
「へ……?」
ファラはきょとんとした。俺はレジカウンターで会計を済ませながら。
「ファラの装備は、それだけじゃ不充分だからな。まずは最低限必要な物を買い揃えないといけない」
「あ、そうですよね、やっぱり……」
ファラ自身も薄々は思っていたようだ。俺は店の入口へと向かいながら。
「それと、これからは別に敬語を使わなくてもいいぞ。名前も呼び捨てでいい。一応パーティーを組んでいるわけだからな」
「わ、分かりました……でも私、敬語で話すのが癖になってまして……」
貴族令嬢として、そういうふうに教育されてきたということだ。
「まあ、無理にとは言わない。慣れてきたらでいい。まあ俺はもうそうしているがな」
「……そういえば、そうですね……」
段ボールで急ごしらえされた仮初めのドアに手を掛けて開けた時、背後でウエイトレスが言ってきた。
「ファラさん、セクハラされたらきっぱりと嫌がってくださいね。あと私に言ってください。そいつをボコボコにしてやりますから」
「は、はあ……」
ファラが返事をして、俺もまた声を上げた。
「怖いですよ! セクハラなんかしませんから!」
「どーだかー」
くそっ! 俺は怒り肩でドアから出ながらファラに言う。
「行くぞファラ。遅れんなよ」
「は、はい……!」




